チーム監督からはスタート前に「様子を見ながら無理しすぎないように走りきれ」という言葉をもらった。これは今日は水温等がつらく、マシン的に持たせる方向でないと厳しいということだろう。前回エンジントラブルで決勝の出走ができなかったから、今回は完走しなければ目もあてられない。
「今日は気温や路面温度が低く全体的にグリップ力が低い。スタート時の回転数は少し落として3500回転でいくか・・・水温85度、油温95度。」フォーメーションラップスタート1分前が出て、エンジンをスタートするとそんな事を思いながら、フォーメーション開始時にその回転数でスタートのテストをする。いつも通りだ。
フォーメーションラップが終わり、再びグリッドにつく。シグナル赤点灯、そして消灯でスタートだ。一瞬遅れてスタートしたが、7番手の位置をキープしたまま1コーナーへアプローチ。インキープでノーズを押し込む。直前にはロータスエラン、そしてその前にはロータスヨーロッパがいる。自分のすぐ後ろにはサニークーペがいて、半車身から1車身分ずつラインをずらしながらプレッシャーを与えてくる。この4台での集団の中で走行することになった。オープニングラップは大きなトラブルもなく、そのままインフィールドを通過、バックストレッチに抜ける。直前のロータス2台はお互いの隙をうかがい、順位争いを展開している。2台が絡んでペースが落ちればこちらは漁夫の利で前に出られるのだが・・・などと考えながら、ぴったりと食いついていく。インフィールドではややセリカが有利なようで、テールを脅かすことができるが、バックストレッチでギリギリのところでスリップストリームにつくことができない。後ろのサニークーペはベストな走りをしていたら、少しずつ離れてかなりバックミラーの姿も小さくなっていた。
そんな調子で3ラップを走行した。どうやら第3ラップの1分15秒224がベストタイムになったようだ。3ラップを走行し4ラップ目に入ったところでメーターを確認すると、それまで何とか適正温度で持ちこたえていたが遂に水温105度、油温130度にまで到達してしまったのが見える。うむむ・・・ペースを落とさざるを得ないか・・・7000rpmリミットのところを、若干回転を落として6500rpmシフトアップに切り替えた。こうしたところで、やはりジリジリと前を行くロータスエラン、ロータスヨーロッパに離されていく。しかしここで無理をしてエンジンを壊しては、元も子もなくなってしまう。悔しさを噛み締めながらもペースを維持した。このペースになると、後ろを走行しているサニークーペが追いすがってきて、テールを脅かされる状況になってしまった。しかし抜かれたくない。ヘアピンなどでは若干インを締め気味のラインで走行していった。しかし5ラップ目以降になると、水温・油温はさらに上昇。やむを得ず6000rpmシフトに切り替えた。この時点でラップタイムは1分17秒にまで落ちていたがそのペースをキープすることとした。もう前は逃げてしまって、かなり遠くに見える状態だ。後ろのサニークーペも追いついてくるかなと思っていたが、相手も水温・油温が厳しいのだろうか、結局少しずつペースが落ちていったとみえ、次第に離れていった。
「前にはもはや追いつけないし、後ろも来ない。となればこのペースをキープするほうが無難だな・・・」
そう頭も切り替え、完走を目指してペース維持に努めた。
かくして、まるで耐久レースのような1分17秒というラップタイムでずっとキープし、前も後ろもいない一人旅となってしまった。レース中、ピットサインにはラップタイムと共に残り周回数を出してもらっていたが、その数字を見るたびに「早く終わってくれ〜」と思っていた(笑)というのは、エンジンをクールダウンさせながらペースを維持することのみに集中していて、最後まで持つかどうか、このペースのままいけるのか、という思いばかりだったからだ。幸いだったのは後ろが追いついてこなかったことだ。その後水温100度、油温125度付近で安定していった。何とか持ちそうだ。感覚的に異常燃焼やエンジンの異音、おかしな挙動などはない。
そして我慢比べのような決勝はようやくチェッカーとなった。チェッカーを受けた時、とてもホッとしたものだ。久々に、耐久レースでもないのにマシンの持ちを気にしてのレースになってしまった。
※決勝を終えマシンを降りて冗談交じりに敬礼をする著者。誰だコイツという感じだ
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