山本和正パーソナルサイト

◎第17話 つくばサマーフェスティバル ヒストリックカースプリントレース

ヒストリックカーレース仕様のTA22セリカ、1600GTVでは前回の4/29のレースがスプリント初参戦であった。しかしこの時は残念ながらトラブルのため決勝のグリッドにつけなかったのである。今回はその悔しさをぶつけるためにも、スプリントでも優勝を狙って参戦したのだ。前回よりエンジンを組みなおし、慣らしを終えて筑波へ持ち込んだのだ。さあ、今度は決勝のチェッカーを受け、しかも表彰台を狙っていくぞ。

苦難を乗り越えて長い道中をクリアしようやくたどり着いた筑波サーキット(笑)。当日は朝から非常に暑く、路面温度、気温共にヒストリックカーにとっては厳しいコンディションとなった。朝6時からの受付を終え、8時の予選に控える。パドック位置は前回同様比較的近い位置を確保することができた。

※予選出走前のセリカ。天気は嫌になるほど暑かった

※同じく出走前のアルファロメオ・ジュリアスーパー。

今回のレースは進行が非常に早く、予選は8時から、そして決勝は10時からとせせこましいスケジュールになってしまった。まずは予選、気温が上がりきる前の走行だ。いつも通りマシンに乗り込み、ヘルメットを被る。いくら気温があがっても、レースでは何が起こるかわからないから、フェイスマスク、レーシングスーツの下に着込む長袖長ズボンの難燃性インナースーツ、そして難燃性素材のレーシングソックスまで着るいわゆる“フル装備”である。マシンに乗るだけで汗がにじみ出てくる。
※さて、恒例となりました朝一番のお約束ポ〜ズ!ナチュラル・ハイにかなりテンションの高いバウム氏。手にしているのは、「眠眠打破」だ!(笑)

1.予選
そんな中予選スタート。まずはゆっくりとコースイン、1周様子を見て2周目からペースを上げる。最初は一緒に参戦したアルファロメオ・ジュリアスーパーのバウム氏とタンデム走行をしようという計画だったが、ジュリアスーパーは何かのトラブルのため出走を遅らせていたようだったので1台でコースインした。
出走前、久々にポーズをとってみた(笑) ※出走前、久々にポーズをとってみた(笑)

予選スタート前の目線をくれるの図。 ※予選スタート前、カメラ目線をくれるの図。
エンジンスタートしてコースインする時。既に目つきが悪くなっている(笑) ※エンジンスタートしてコースインする時。既に目つきが悪くなっている(笑)
ヘルメットを被ってもリラックスしているバウム氏。 ※ヘルメットを被ってもリラックスしているバウム氏。
乗り込んでウォーミング中。 ※乗り込んでウォーミング中。
緊張していたのか? ※コースイン直前。ちょっと可愛い目?緊張していたのか?

3周目からアタックを開始したのだが、自分の前には3台のマシンが走行していて、その2番目にあたるマシンがどうやら後ろを見ていない様子。動きが怪しく、私のすぐ前を走っていたマシンのドライバーもイライラしている様子だった。そこで1コーナーでまとめてそれらを抜いてやろうとインをつくラインで進入したが、思ったよりも前のマシンのペースが速く、インをついたはいいがアウト側から後ろを見ていないマシンがかぶせてくる形になってしまった。思わずブレーキングに力が入ってしまい、4輪フルロック状態になってタイヤスモークを激しく出してしまった。

これは…いかんいかん…。

予選は決勝じゃない。自分だけ熱くなり過ぎるのは危険だ。実際はそれほど熱くなっているわけでもないのだが、これだけ激しくロックさせながらインをついたとなると、結果的に回りは熱くなっていると見るだろう。ここでハザードをつけてペースを思い切り落とし、それらの集団から離れた。組みなおしたエンジンのレスポンスは良く、上の回転域までストレスなく回る。エンジン音が若干今までと変わったが、パワー感に問題はなかった。タイヤがタレる前にタイムを出したいその気持ちから、最初から飛ばしていくのが自分の予選のやり方だが、それは今回できなかったようだ。とりあえずピットからのサインボードでは1分17秒台の表示が見えていた。まだ全く話にならないタイムだ。

タイミングを見計らって、1周ゆっくりと流した後に再びアタック開始。完全にクリアラップを取ることができる状態をつくった。さあ、タイムを出すぞ。2周ほど走行したところで、1分15秒台が出てくる。昨年の春の走行では非公式ながら1分13秒台が出ているだけに、リファインしたエンジンでそれに匹敵するタイムを出したかったので、ブレーキもかなり突っ込み、集中してアタックした。タイヤも全体的にグリップ感は低いが大きなタレはなく、ターンインで過度にアンダーステアになることもなかった。

しかし水温計、油温計を見るとペースをこれ以上維持できない数値を指しているではないか!

水温110度、油温130度。…限界だ。高回転域でのパワー感が薄くなってもいた。前回のレースの悪夢が頭を過ぎる。すぐさまスローダウンし、クールダウンを試みた。異常燃焼はなさそうだった。回転を下げて走行すると温度はすぐに下降した。1周クールダウンをはさみ、水温95度、油温115度程度まで下がったところで再度アタックを開始した。

アタックは3周が限界だな…それ以後はクールダウンしなくては…

そう思いながら、回転数と同時に水温計・油温計、燃圧計を各コーナー脱出毎に確認した。

そして限界に達するまでに出したタイムは、1分15秒310。13秒台はおろか、15秒を切ることもできなかった。
忙しいピットの様子 ※予選開始直後にすぐピットインしたバウム氏と忙しいピットの様子。 著者にサインボードが出ようとしている。

予選終了後にピットレーンを走行する著者。 ※予選終了後にピットレーンを走行する著者。
予選終了後にピットレーンを走行する著者。 ※今回Fクラスに参戦したチーム監督が自らステアリングを握るカローラクーペの予選走行の模様。直前にエンジンがブローしてしまい、 急遽Pクラス並みのノーマルエンジンで参加となってしまった。

2.決勝
決勝は10時過ぎからコースインというスケジュールであった。完全に気温の上がりきる前の時間帯ではあるが、この時既に30度は超えていた。予選の時より格段に暑い。しかし当然インナースーツやソックスも全て着る“フル装備”でマシンに乗り込むのだ。この時はさすがに簡易クールスーツ(冷媒をベストの中に入れる簡易式のクールスーツ)を着て乗り込んだので、胴回りがひんやりとしてかなり楽だった。 ピットレーンを逆走してスターティンググリッドに付く筑波方式でグリッドに停車。スタート位置は全クラス混走の7番手だ。いつも通りの手順でスタート前進行が進められていく。
決勝グリッドについたバウム氏のジュリアスーパー。 ※決勝グリッドについたバウム氏のジュリアスーパー。

決勝グリッド セリカ ※決勝グリッドについた著者のセリカ。この時は既にかなり集中していた
決勝グリッド セリカ ※はい、コースイン前のキャンギャルショット(?)いや、チーム関係者でした(笑)

チーム監督からはスタート前に「様子を見ながら無理しすぎないように走りきれ」という言葉をもらった。これは今日は水温等がつらく、マシン的に持たせる方向でないと厳しいということだろう。前回エンジントラブルで決勝の出走ができなかったから、今回は完走しなければ目もあてられない。

「今日は気温や路面温度が低く全体的にグリップ力が低い。スタート時の回転数は少し落として3500回転でいくか・・・水温85度、油温95度。」フォーメーションラップスタート1分前が出て、エンジンをスタートするとそんな事を思いながら、フォーメーション開始時にその回転数でスタートのテストをする。いつも通りだ。

フォーメーションラップが終わり、再びグリッドにつく。シグナル赤点灯、そして消灯でスタートだ。一瞬遅れてスタートしたが、7番手の位置をキープしたまま1コーナーへアプローチ。インキープでノーズを押し込む。直前にはロータスエラン、そしてその前にはロータスヨーロッパがいる。自分のすぐ後ろにはサニークーペがいて、半車身から1車身分ずつラインをずらしながらプレッシャーを与えてくる。この4台での集団の中で走行することになった。オープニングラップは大きなトラブルもなく、そのままインフィールドを通過、バックストレッチに抜ける。直前のロータス2台はお互いの隙をうかがい、順位争いを展開している。2台が絡んでペースが落ちればこちらは漁夫の利で前に出られるのだが・・・などと考えながら、ぴったりと食いついていく。インフィールドではややセリカが有利なようで、テールを脅かすことができるが、バックストレッチでギリギリのところでスリップストリームにつくことができない。後ろのサニークーペはベストな走りをしていたら、少しずつ離れてかなりバックミラーの姿も小さくなっていた。

そんな調子で3ラップを走行した。どうやら第3ラップの1分15秒224がベストタイムになったようだ。3ラップを走行し4ラップ目に入ったところでメーターを確認すると、それまで何とか適正温度で持ちこたえていたが遂に水温105度、油温130度にまで到達してしまったのが見える。うむむ・・・ペースを落とさざるを得ないか・・・7000rpmリミットのところを、若干回転を落として6500rpmシフトアップに切り替えた。こうしたところで、やはりジリジリと前を行くロータスエラン、ロータスヨーロッパに離されていく。しかしここで無理をしてエンジンを壊しては、元も子もなくなってしまう。悔しさを噛み締めながらもペースを維持した。このペースになると、後ろを走行しているサニークーペが追いすがってきて、テールを脅かされる状況になってしまった。しかし抜かれたくない。ヘアピンなどでは若干インを締め気味のラインで走行していった。しかし5ラップ目以降になると、水温・油温はさらに上昇。やむを得ず6000rpmシフトに切り替えた。この時点でラップタイムは1分17秒にまで落ちていたがそのペースをキープすることとした。もう前は逃げてしまって、かなり遠くに見える状態だ。後ろのサニークーペも追いついてくるかなと思っていたが、相手も水温・油温が厳しいのだろうか、結局少しずつペースが落ちていったとみえ、次第に離れていった。

「前にはもはや追いつけないし、後ろも来ない。となればこのペースをキープするほうが無難だな・・・」

そう頭も切り替え、完走を目指してペース維持に努めた。

かくして、まるで耐久レースのような1分17秒というラップタイムでずっとキープし、前も後ろもいない一人旅となってしまった。レース中、ピットサインにはラップタイムと共に残り周回数を出してもらっていたが、その数字を見るたびに「早く終わってくれ〜」と思っていた(笑)というのは、エンジンをクールダウンさせながらペースを維持することのみに集中していて、最後まで持つかどうか、このペースのままいけるのか、という思いばかりだったからだ。幸いだったのは後ろが追いついてこなかったことだ。その後水温100度、油温125度付近で安定していった。何とか持ちそうだ。感覚的に異常燃焼やエンジンの異音、おかしな挙動などはない。

そして我慢比べのような決勝はようやくチェッカーとなった。チェッカーを受けた時、とてもホッとしたものだ。久々に、耐久レースでもないのにマシンの持ちを気にしてのレースになってしまった。
※決勝を終えマシンを降りて冗談交じりに敬礼をする著者。誰だコイツという感じだ

キャンギャルショット ※お約束のキャンギャルショット。しかし今回は撮影者(著者)が慌てて撮ったため、写りがイマイチだ(苦笑)被写体はイイのに!

決勝結果15周 19分20.073 ベスト1分15秒224 3/15
こんな結果に終わったスプリントだったが、改めて層の厚さを感じた。今回は参加台数が少なかったとは言え、タイムでもやはりロータス勢には太刀打ちできなったのが残念。次回は耐久、決して負けられない!関係者の皆様に今一度のご支援・ご協力をお願いすると共に、気持ちを新たに次のレースに臨むつもりだ!
決勝コースイン直前のトウカイ監督。集中している。 ※決勝コースイン直前のトウカイ監督。集中している。

決勝コースイン直前のトウカイ監督。集中している。 ※グリッド上でインタビューを受ける監督。「エアコンはついているんですか?」との質問に、「付け忘れました」と(笑)
グリッドについた監督のカローラクーペ。 ※グリッドについた監督のカローラクーペ。
決勝コースイン直前のトウカイ監督。集中している。 ※チェッカーを受け、ピットレーンを走行中。ホッとしたのか、にこやかに手を上げる
↑ページ先頭に戻るレース参戦記TOP
©KAZUMASA YAMAMOTO