山本和正パーソナルサイト

◎第15話 NRC鈴鹿新春ゴールデントロフィーレース ヒストリックカー50min

2004/1/18
昨年のレースと、筑波で行われたラッテストーンレースのヒストリック耐久ではクラス連勝という結果を残すことができていた我々は、エンジンと足回りの一通りのさらなるリファインを行い、12月にフルコースでテストも行って、満を持してこのレースに臨んだ。やはり狙うのは優勝しかない。今回はドライバー2名で、私とペアを組むことになったのは、参加車両のセリカのデビュー戦でもあった一昨年の筑波サマーフェスティバルでドライバーとして参戦した、レイである。テスト走行にも参加し、ドライバー交代の練習も例によって行いながら昨年の車載映像なども見つつ、レースに備えてきた。(どういうカテゴリーのレースか知りたい方は、参戦記のページから開いてみて下さい)

チームもスポンサーの皆さん達も、2勝挙げた中で今回も優勝を意識しており、「勝ち続けること」が求められている。これはドライバーにとってプレッシャーとも言えるが、レースは水モノ、終わるまでどうなるか分からないものだからそれほど結果のことは考えないでいた。

うぉぉっ、凍ってる。

レース当日の受付は、朝6:15から。鈴鹿サーキット9番ゲート集合時間は朝の5:30ということになったので、前日から鈴鹿入りし、ホテル宿泊で当日に備えるスケジュールとした。朝その時間過ぎに集合してみるが、路面は凍結している様子。キラキラと光っていた。岐阜県在住の私は別段路面凍結には慣れているが、鈴鹿市内でここまで凍るとは思っていなかった。 時間になると、まだ世が明けきらない暗い時から受付開始。例によって、受付にてくじ引きでスターティンググリッドを決めるのだが・・・。スクラッチカードで引いたグリッド位置は・・

9番グリッドだった!全15台の中だったため、まぁ真ん中あたりからのスタートかと思い、さらに耐久なのでグリッド位置が即順位に直結することもないので楽観視していた。 エンジンルーム
※マシン心臓部近影。信頼性の高いエンジンに仕上がり、拭け上がりも格段によくなった。7000rpmまでストレスなく回る。
ネームとヘルメット
※ドライバー2名のネームとヘルメット。写真では見づらいが、右側面の漢字で名前のステッカーを貼ることが義務付けられた。

スケジュールは朝9時ごろから走行が一回あり、3時ごろに決勝スタートという“長い一日スケジュール”。コースもやはり凍結していて、その処理でまず大幅に進行が遅れてしまった。さらに事故による赤旗中断なども重なり、大幅に遅れに遅れてしまったのだ。車検すら非常に手短で(出張車検だったので待っていてもなかなか来なかった)、しかもチェック項目を完全に確認していなかったのだろう、後でもう一度車検に訪れるような状態だった。 テンションの高いだれかさん
※朝からものすごくテンションの高い誰かさん。凄過ぎる。掲載せずにはいられなかった1枚だ。手に持っているのはもちろん酒ではない。 酔ってもいなければ、夢遊病に侵されている訳でもない。・・・って第3弾だ(笑)是非昨年、そして筑波ラッテストーンレースレポートをご覧あれ!(爆)だんだんノリとポーズが変わってきた感じが・・・(笑)

ようやく朝の走行が開始されたのは予定より30分遅れだった。しかも走行時間は15分から10分に短縮。15分なら、実際の決勝をシミュレーションし、数ラップでピットイン、ドライバー交代してから数ラップし、また2回目のドライバー交代をして、短縮形で練習を一通りの手順でやっておくつもりだったが、それもできなくなってしまった。10分では1回ドライバー交代が限界だからである。
モニターを見る様子
※マシンと共にピットモニターで他の走行の様子を見て談笑するチーム員。著者が笑って話しかけているのに皆無視しているように見える(爆) 朝の走行直前の様子
※朝の走行出走直前、チーム監督と言葉を交わし打ち合わせる著者。

ようやく走行がスタートするもまだ朝一番ということで、各所で路面は濡れており路面温度も低く、非常に滑りやすい状態だった。高速コーナーである1コーナーや逆バンクあたりで特に滑りやすかった。この時間の走行は耐久とスプリント合わせて40台以上が一斉にコースインするため、短い東コースでは大混雑。一度もクリアラップが取れないどころか、ペースを掴めないまま走行していたが、ピットサインが全くどこから出ているのかわからなくなってしまい(混雑のため)、ピットインすると既に時間切れになっていた。どうやら、10分という話だったがもっと短縮されられてしまったようである。タイム的には1分12秒と、全く話にならないタイムに終わった。予定していたドライバーチェンジもできず終い。
ピット前で整列
※朝の走行出走前、ピット前へ整列した時の様子。ズラリと名車が列を成している。著者はヘルメットのバイザーを下ろしている。すぐ後ろにはスプリントレースSクラスのセリカがいる。

それにしてもスケジュールは何があったのかその時点ではわからないが、どんどん遅れていっているようだった。昼過ぎには予定から40分〜50分も遅れてしまっていた。おいおい、大丈夫か?ちゃんと走れるんだろうな?ピット内はどこもそんな雰囲気に。

「このままじゃあ、50分耐久が30分耐久になったりして、ぐははは」などとあり得ないだろうという冗談を言いながら、ドライバー交代を例によってドアオープンからドアクローズまで15秒以内で行うことができるように詰めの練習した。

そして予定より大分遅れてブリーフィングを行ったのだが、そこで知らされた内容に驚いてしまった。

50分耐久が、本当に30分耐久になってしまったのである。

冗談で言っていたことが、本当になってしまった(本当にそんな冗談を言っていたのだ!(爆))。それに伴い、最低ドライバー交代2回が1回でよくなり、そしてスタート後40分経過後はドライバー交代はしてはならないというルールが削除されることになった。(公式通知NO.5)。しかし、参加者の一人が競技長に対し異議を申し立てる形で発言した。

その参加者の発言内容は、要約するとこうである・・・
『このレースはプロのレースではなく、シリーズをかけて争っている訳ではない。ドライバー交代が1回でいい、ということになるとドライバー2名のチームが有利になり、ドライバー3名のチームは勝つためには誰かが乗れない形となってしまう。レースを愉しみにしていたドライバーにとってそれは酷であり、少なくともそれが公平になるように、ドライバー交代2回義務付けを変更するべきではない』
というものであった。ブリーフィング会場は賛成の雰囲気になった。

数分後審査委員会からの決定が下され
ネオヒストリック耐久については先述の通りのルールで1回のみでよい、ヒストリック耐久については2回とする
ということになった。

結論から言うとドライバー2名のチームにいる私も賛成だった。というのは、50分耐久から30分耐久になったということは、それだけピットワークの占める時間が増えるということだ。従ってドライバー交代の早さで強みを持つ我がチームの場合、1回より2回やったほうがそれによってライバルと差がつきやすくなる。ドライバー2名だから1回でも不利になることはないが、30分という時間の短さを考えると2回のほうがさらに有利になることは間違いない。

早速ピットに帰ってチームでピットインのタイミングや作戦を話し合った。

30分になったことで、ペース的にはスプリントレースで、とにかく全開、ブレーキもタイヤも限界まで使用してベストタイムをキープする走り方でいけというチーム監督からの指示が出た。またピットインのタイミングは当初の時間配分を凝縮したプランを基本とするが、そのタイミングは状況を見て監督が決定し指示するということとなった。ピットサインの見落としは許されない。

"この状況の変化を利用し、最大限チャンスに変えるように走ることが肝要"だ。まずは走行でミスをしないこと、ピットワークは練習通りやれば慌てなくても確実に決めればそんなに遅くはならないだろう、というようなことをさらに話し合った。

さて、今回も2回交代ということで、スタートが得意な私がスタートドライバーに指名された。ということはドライバー2名だから、もう一度交代しフィニッシュドライバーも私ということになる。前レース、前々レースと同様のパターンになった。

まずコースインする。エンジンはテスト走行時に「気づくとレッドゾーン近くまでまわっている」というぐらいスムーズに吹けるようになっており、水温、油温を確認しながら1周してグリッドについた。決勝は1台がマシントラブルとなり14台でのレースとなった。 プラグ交換
※決勝出走前のピット内。ウォームアップが終わるとプラグを暖気用からレース用に変える。 レイと言葉をかわす著者
※パートナーのドライバー、レイと言葉を交わす著者。この時何を話したのかもう覚えていない(笑)。

シートに座ってからというもの、朝からスケジュールが狂ったり、サーキット全体が落ち着きのない状況であったためなのだろうか、どうも冷静さが自分自身で何となく足らないような気がしていた。気のせいなのか?と思うぐらい些細な感覚だったが、こういう微妙な精神的感覚がレースでは意外にバカにできないものであるのは自覚していた。些細なことから冷静さを欠いてマシンを壊したり、予想しなかった事故に巻き込まれたりすることがあるからだ。
レイと言葉をかわす著者
※例によって早めにマシンに乗り込む著者。チームの皆が見守っている。

だから自分自身に「落ち着け、落ち着いてまず計器類のチェックをして・・・頭の中で全体の手順をおさらいするんだ」と言い聞かせていた。 パートナーのレイとともに
※グリッドにつき、パートナーのレイと共に。 3人で
※ 監督と言葉を交わし、3人で。グリッドはこのような感じ。9番手だ

フォーメーションラップが始まり、ややウェーヴィングしながらクネクネと走ってタイヤのフィーリングを最終確認する。路面温度は朝よりずっと高く安定している。よく晴れて日光が眩しい。最高のコンディションになった。再びダミーグリッドにつき、シグナルと回転計を見据える。今日の感じではスタートは3500〜4000rpmと感じアクセルでそこに合わせる。そしてシグナル赤点灯→消灯と同時にクラッチをミートし、スタートさせた。よし、うまくいった。すぐにマシンは加速体制に移った。9番グリッドは鈴鹿ではアウト側になるので、まずスタートと同時に加速しながら右に進路を変えてコース中央を走行。後方から上のクラスのポルシェが鋭く加速し抜いていく。その直後イン側を走っていたフロンテのさらにイン側に進路を変え、1コーナーでは一番イン側のラインをとることに成功。その進路をキープし2コーナーのブレーキングでさらに前を行くマシンのインを差した。さらにその後のS字一つ目の左でもう1台をオーバーテイク、ここで総合4番手に上がった。前3台はいずれもSクラスで、ポルシェとフェアレディZが2台であった。

オープニングラップはうまくいった。このまま何とか上位3台に食らいついていきたいところだと思いながらも、さすがにジリジリと離されていく。さすがに1周目、2周目はタイヤが温まっておらずタイムは1分8秒台だった。しかし頭の中では「ほー、8秒台が冷えた状態でも出るのか〜」と予想よりも早い段階での8秒入りに満足もしていた。3周目か4周目あたりでピットサインを見ると1分7秒の表示が。おお、温まってくると7秒にも入るのか、と思いながら、監督の指示通りペースアップに努めた。

それにしてもオープニングラップあたりでの争い以外、ほぼ一人旅になってしまった。後方から上のクラスの432Zとミニが抜いていく。432Zはわかるが、あのミニは何だ!?速いのなんの、さすがにミニとは言えSクラスである。ストレートではスリップストリームに入れば着いていけるものの、全体ではジリジリと離されていった。

水温80度、油温110度〜115度の間というところ、全く問題なし、コンディションもパワー感にも問題はない。ブレーキも全く問題なく、このマシンなりに安定した挙動でブレーキングに専念できた。シャシーバランスとしても弱アンダーセッティングで非常に扱い易い。毎戦少しずつセッティングをすすめてきたので、やはり今までで一番乗り易いマシンに仕上がっている印象を受けた。またスポンサーのERGオイル・ユーロリサーチによると、今回データによると3馬力アップするものだという、「魔法の水」なるものをクーラントに注入したらしい。確かにこの効果は、トルクの一番かかる中回転域から高回転域手前までの部分で、水温が温まりきる前の段階で吹け上がりが軽くなった印象を受けた。レース中盤になると、それを感じる余裕がなかったのかもしれないし、数馬力の差を体感するのはなかなか難しいものがあるが、いずれにしてもタイムは出ていたのだから何らか効果があったのは間違いないだろう。

スタート後10分程度経過したころだろうか、ピットインのサインが出た。さあ、1回目のドライバー交代だ。手順通りにピットイン、レイにドライバー交代をした。さあ、レイ頼んだぞ! レイにドライバー交代。またしてもうまくいった バンザイ三唱でレイを送り出す・・・じゃないだろ!?ドライバーチェンジが終わって合図する著者。 山本和正→レイ
※レイにドライバー交代。またしてもうまくいった
送り出すチーム員たち
※バンザイ三唱でレイを送り出す・・・じゃないだろ!?ドライバーチェンジが終わって合図する著者。

すぐに水を飲みながら、椅子に座って休憩しがてらピットのモニターを見る。レイのペースは最初上がらず1分13秒程度からスタート。無理はない、鈴鹿東コース全開走行は初めてだということだったからだ。数ラップで1分10秒台に入り、そこから8秒台に入ってきたようであった。しかしこの間、休憩という頭があったのかあまり集中してタイムや走りを確認していなかった。裏を返せばパートナーの走りに安心していた、ということなのだろう。

レイが走行中、最終的に順位は総合で5位〜7位でクラスではトップをキープしていた。モニターの順位とエントリーリストを見比べながらクラス順位を確認しながら水を飲んで交代の時間まで座っていることにした。

ほどなく、あっという間に交代の時間が来た。若干早めという感じのピットイン指示でレイがピットへ入ってきた。そして交代。コースに復帰する。コースインして1コーナーですぐにブレーキフィールを確認するが、問題なし。タレは感じられない。タイヤもまだいけそうだ。よし、これならペースアップできそうだと思った。この時点で水温、油温とも先ほどとそう変わらず、コンディションもグリーン。後半に入りガソリンもこなれてきている状態だから、タレがないためにタイムを狙っていけそうだった。心なしかマシン挙動も軽くなってきていた。リアの感覚がよりリニアになってきたようだ。やはり軽くなってきている。最終コーナーである東コースショートカット出口付近は、舗装の継ぎ目とフルコース時のバンク角の関係で路面のうねりがある箇所がある。そこではアクセル全開でいくと軽くそのうねりでリアが流れ、弱カウンターで舵角をほぼゼロにしてオーバーステア気味に立ち上がっていく挙動に変わってきていた。
レイ→山本和正
※続いてレイから交代する著者。これもうまくいった

装着したアドバン・ネオバの縦方向のトラクションは結構あり、舵を当てた状態でもある程度アクセルオンできた。これは足回りのセッティングが要因でもあるが、適切なタイヤ内圧であればサイドウォールのたわみによってある程度横Gを吸収してくれるような感覚が感じられ、特に逆バンクを立ち上がって登りの右、東コースショートカットへのアプローチ時に特に感じられた。切り替えしのタイミングが合えば、思ったよりも長く全開にしておけるのだ。今回タイヤのトレッド性能を最も感じたコーナーだった。

後半になるとピットを通り過ぎるたびにチーム員がだんだんと盛り上がってきた。ちらりと電光掲示板を見ると総合5位につけている。残り時間も数分になってきた。そして、相変わらず一人旅が続いた。

そして、そのままチェッカーフラッグ。よし、今回もクラス優勝だ!いや〜終わったな〜と思いながら、いつも通りポストのオフィシャルの皆さんに挨拶しながらクールダウンを終え、ピットに戻ってきた。
レイ→山本和正
※拍手でチームの皆に迎えられた瞬間。Thumb UP!でパルクフェルメに誘導された
レイ→山本和正
※マシンから降りた直後の著者。喜びを身体で表現だ(笑)

戻ってくると、1番ピットの車検場の方に誘導される。マシンから降りるとチーム監督以下みんなが出迎えてくれた。総合5位と思っていたが、どうやら1台がペナルティを受けたために4位になったようだった。シャンパンファイトのある暫定表彰は、鈴鹿の場合総合順位のみ。従って残念ながらお立ち台には登れなかったが、クラス優勝は間違いない。しかし再車検でマシンを停めていると、クーラントが漏れ出しているではないか!…実は最後の数ラップは何故か冷静さを欠いて水温、油温の確認を全く忘れていたのだ!マシンを完全に信頼して安心しきっていたというのもあるが、確認はするべきだった。朝からどうも調子が狂った感覚があったが、こんなところで形となってくるとは・・・。もちろん、メカニックや監督から「見ろよ」と言われた(笑)。すみませんでした(笑)。
マシン前でポーズ
※決勝終了後にマシン前でレイと共にポーズ。勝ちを噛み締めた瞬間だ。
電光掲示板
※最近お約束になってきました、電光掲示板。総合4番手が我々だ。

これで耐久に4戦出場中3戦クラス優勝。現在も連勝中だ。この勢いを続けていきたいものである。

今回は参加チームであるプロジェクト・トウカイからサーキットトライアル、走行会を含めて4台ものマシンが鈴鹿を走行したので、非常にピットはにぎやかだったのは嬉しかった。チーム関係者をはじめスポンサー各社の皆様、応援していただいた皆様に、改めて感謝を申し上げたい。 チームで記念撮影
※はい、喜びと共にチームの皆さんと共に撮影。
監督とメカ
※全く嬉しそうな監督とチーフメカ。う〜んいい笑顔だ!

最終結果 30分耐久レース※50分耐久が30分耐久に変更となった
エントリー車名:ERGロンド東海セリカ
順位: 総合4位、クラス優勝(P1クラス)
所要時間:25ラップ、30’50.691
ベストタイム:1’07.114
<ご協賛各社>
ヨコハマタイヤ
ERG(ユーロリサーチ社)
ロンド ※順不同
チーム監督:西
チーフメカ:伊藤
第1ドライバー:山本
第2ドライバー:深谷
サーキットクイーン
※はい、お約束のキャンギャルショット^^我々優勝を祝してくれる鈴鹿サーキットクイーン^^

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