山本和正パーソナルサイト

◎第3話「富士チャンピオンレース デミオクラス参戦」

10月20〜22日に富士スピードウェイで開催された、富士チャンピオンレースに参戦しました。
いや〜ひとことで言うと、「つらい戦い」でした。レースはいつでも辛く苦しいものですが、精神面も含め、 何かと戦いづらいものでした。もちろん、レース自体は楽しめたし、クラッシュ等もなく無事終えることができたので、 いい経験と、勉強になったことは間違いありません。順を追ってレポートします。

20日(金)スポーツ走行

東名集中工事のため、前日の夜から下道で富士を目指し、夜中にメインゲート前に到着した。天気予報では、この日の午前中は何とか雨は降らないということでしたが、朝から冷たい雨がパラパラと。結局ウェットコンディションとなった。
そうした中、午前中のセッションがスタート。タイヤ内圧のみ調整し、ドライセットのままコースイン。 午前中はコース上に川が流れるほど雨は激しくなく、乗り方でカバーしてタイム的には最初2分23秒程度。感触がつかめ、タイヤが温まってきた数ラップ後、21秒台まで伸びた。1セッション目はその程度で終了。 思ったよりも路面温度が低く、タイヤが十分に発熱しないため、タイヤ内圧を冷感2.6まで上げ、減衰力を1段柔らかくして(減衰力調整式ダンパーを装着している)、2セッションを走行。何故バネを交換しなかったかというと、決勝の日曜日は、予報では晴、ということだったからだ。ドライセットのまま大きく変更しないことにした。そうして走行したタイムは、2分19秒まで伸びた。

<うんちく ♪>
DEMIOは、タイヤはファルケンアゼニスのワンメイクで、ドライでもウェットでもこれしか使えないのだ! だからドライはまだいいが、ウェットになると新品タイヤでないとかなりキツイ! ブレーキングが特にすぐにロックしやすいので、ここがドライバーの腕の見せ所であり、難しさでもあるのだ!

でもちょっと濡れた路面だと、コントロールが面白い!滑って楽しいかったですよ!決勝も雨で少し濡れてたら、 腕の差がはっきり出てもっと面白いかも!などと思ったりした。
そうして午前の走行が終了。昼ごろから雨が激しくなり始め、午後のセッションはヘビーウェットとなった。 決勝はドライだから、ここで無理してヘビーウェットのコンディションで走行しても仕方ないということで、 午後のセッションは「一体コースに川が流れた状態だとこの富士はどんな感じか?」というのを体験するために走行してみた。
しかしやっぱりすごいことになっていて、300R(ヘアピンを抜けた次の、下り坂のゆるやかな右カーブ)は川。 突然ハイプレで車輌が思わぬ方向に向いてしまう。いや〜こわいこわい。

21日(土)なにもなし!

DEMIOの走行プログラムはなし。でもここで帰れませんのでゆっくりレース観戦した。 FJ1600の予選・決勝もあったのだが、いや〜ビリビリ来ましたね!やっぱりフォーミュラレースは最高! 1位がうまくて、途中抜かれるんだけれども、1コーナーのブレーキングで押さえたり、ドッグファイトをしながらも 最終的にはトップを飾るという、いいレースを見せてもらいました。1コーナーに1位から4位までが4台並んで アプローチする場面などは圧巻!シビレた。いいレース見せてもらった。優勝したドライバーは、間違いなく上のカテゴリーで通用するだろう。

22日(日)スポーツ走行、予選、決勝

スポーツ走行(8:00〜8:20)

DEMIOはこの日予選・決勝と一気に進行しました。まず、朝一番のスポーツ走行。
案の定ドライとなり、減衰力は以前走行したセットのフロント2段、リア3段でまずスタート。しかし以前から気になっていた通り、フロントが柔らかく、ブレーキングのノーズダイブ時にやや不安定な挙動が発生。走行中にピットインし、フロントを1段硬くして3段に変更、再コースインした。
しかし、上手くタイムが伸びません。気温も予想より低いせいもありエンジンも吹けず、ストレートエンドで6000rpm付近止まり。またタイヤのよれが大きく、グリップ力も十分得られない状態。スリップストリームにも終始つくことができず、走りのリズムを得られないまま、結局この20分のスポーツ走行では13秒台しか出なかった。
釈然としない気分でこのフリーセッションを終えた。

予選(9:50〜10:10)

いよいよ予選。まずセッティングは、スポーツ走行の感触から、まずタイヤ内圧を1発にかけるために目一杯上げ、 減衰力は3段/3段のまま、そしてアンダーを消してターンイン時のノーズの入りを良くするため、タワーバーを外した。
一発のタイムを必ず出そうと、集中力を最大限に高め、そしてスリップストリームを有効に使おうとタイミングを見計らってコースイン。 最初の3ラップはウォームアップに費やす。チームメイトのおなかん氏の後ろにつけ、お互いにスリップを利用し合うことにした。しかしその際、あるこのカテゴリーのベテランドライバーが私の後ろにピッタリとつけてくるではないか!これは、ダブルスリップを使う気だな・・・と思いながら、ペースアップしていくと、やはりスリップストリームから、サイドスリップに持ち込み、タイムアップを垂チていた。しかも私を抜いておなかん氏との間に入り込み、おなかん氏のスリップも使用するつもりのようだ。

<うんちく ♪>
サイドスリップ:
後方から前車を抜くとき、ストレートでは前車の後ろにピッタリとつくと、 前車が風を切ってくれるため自分は風の抵抗をうけることなく加速でき、 しかも前車の切った風が後ろで巻きこむ気流になるため、それに乗って加速できるのだ。 さらにその後、相手の横ギリギリに並び、自分の車と相手の車との間にできるだけ速い風の流れをつくることで さらにその加速を維持できる。これがサイドスリップだ。

それはいいのだが、どうも私がペースを掴み、タイムアタックしたいというタイミングの時にそのベテランドライバーは おなかん氏の横に並びかけ、私の頭を押さえてしまうのだ。このことを知ってか知らずか。 押さえているつもりでやっているとすればたまらない。結果的にそういうことになっているのだとは思うが。 そうした状況が数ラップ続いた。ホームストレート通過時に「10 6」というピットサインが見えた。おお、10秒台が出たか、と思いながら、パネルに目をやると、油温120℃、水温88℃。う〜ん、やや湯温が厳しいか。
そうこうしているうちに自分のペースを掴みきれないまま、メインゲートを通過時に確認すると残り2分少々。もうこれがファイナルラップだろう、と思い、前にいるベテランドライバーを一気に抜いて、最後の1周に一発勝負をかけよう、と思った。そこで1コーナーでインを取るラインを取った。しかしその後2コーナーに対しアプローチするラインを取った際に、ブレーキングで少々ロック気味だったのでラインが若干はらみ、アウト側にいた車両を結果的にラインをふさぐ形となったらしい。自分は後ろに目がついているわけではないので完全には見えない。だがアウト側を完全に塞いだわけでもなかったのだが(1車身分は残していたつもりだった)、結果的にその車両はコースアウトしてしまい、あわやクラッシュか、という感じになってしまった。
決してその車両と当ったわけではない。また横に並んでいるのは視界に入っていたし、並んで立ち上がることができたはずだった。 私はそのまま一度ペースダウンし、手を上げて挨拶をした。そのままどうやらチェッカーだったようだ。最終コーナーを立ち上がったところで誘導され、車両保管のパルクフェルメに駐車となった。
確かに私にも行き過ぎた点もあったし、直接的に私がコースアウトさせてしまったような形になっていたので、車両を降りると、すぐに私はそのコースアウトしたドライバーのところへ行き、謝罪した。 ベテランドライバーはそれを見て、「あれが決勝でやったら俺ははじいているよ。」と言っていたが、まあ初めて出るカテゴリーだし様子見もせねばならない。まず謝っておいた。 その後、一応そのアウトしたドライバーのパドックまで行って話をしようと思い、自転車でパドック全域を回って探してみたが、残念ながらドライバーやチーム関係者は見つけることができず、あきらめて帰った。
少しフクザツな気分だった。しかしタイムは2分10秒621、レンタルャVンでのレコードタイムということで、チーム監督は喜んでくれた。

決勝(13:20〜)

ついに決勝だ。決勝前ブリーフィングを終えると、コントロールセンター横の待機ラインに車両は既に並べられていた。 俺は軽くストレッチ体操をして体を暖め、チーム監督と言葉を交わすと、すぐに車両に乗り込んだ。 コースではちょうど、スターレットクラスの決勝が行われている。 多くのドライバーがそのレースの模様を待機ラインから見えるヘアピンから見て、話し合ったりしている様子だった。 私は決勝前は誰とも話したくない。いつものスタイルで、すぐに乗り込むか、またはピット内でひとりでいるようにしている。 フェイスマスクを被り、ヘルメットを装着。シートベルトを締め、じっとしていた。
よく「コンセントレーションを高める」などというキャプションでF1ドライバーの出走前の画像などが紹介されることが あるが、全てそうではない。私の場合はただ単にもう何も考えたくないし、無心になりたいので、 誰とも話したくないので乗り込むだけ。それ以外に別に理由はない。フォーミュラカーでのレースの前はそれに加えて、 強烈なGに耐えながら「攻めるぞ!」という意気込みを維持しなければならないから、 否応なしに昂ぶる気持ちを、むしろ抑えている気分なのだ。
当然これは個人差があるし、人によって感じ方が違うが、恐らく多くのドライバーが、 「気持ちを高める」というより「気持ちを抑えている」という状態になると思う。

さて、フォーメーションラップも終わり、再びグリッドにつく。あとはスタートを待つばかり。 スタートは得意な方なのでそれほど心配はしていなかった。ドライの場合4000rpm付近でクラッチミートだ。 シグナル赤が点灯する。赤が消えた瞬間に青がつくので、青がついてからミートしていたのでは僅かに遅くなるから、 赤しか見ていない。赤が消えた瞬間にミートだ。予選は6番手。すぐ前にはチームメイトのおなかん氏、 斜め前にはベテランドライバーがいる。 私の場合はグリッド位置やや後ろに停車し、一度クラッチがつながるかつながらないか、というところまでペダルを上げてみて、動き出したら少しだけ戻して、スタート時に瞬間的にミートできるようにしている。人によってはサイドブレーキを使うようだ。 ややホイルスピン気味にスタート。すぐに加速する。 前も後ろもスタートをミスした者はいない。ダンゴ状態で1コーナーに進入していく。前の方で潰れないかなあ、 と一瞬思いながらも、そのままの順位で2コーナーをクリア。続いてサントリーコーナー(Aコーナー)に進入。 前についていきながらも、後ろを押さえようと左右にラインを変えながら走行した。しかしその後、 何ラップ目だったか覚えていない。多分3〜4ラップ目ぐらいだったと思うが、スキを付かれて2台一気に抜かれてしまった。 これがこの決勝における最も痛い瞬間だったのは後で気づくことだ。 この状態で走行していると、どうもタイヤの内圧が上昇してきていたのだろう、立ち上がりで少し遅くなったような気がする。 確かに毎ラップコン・秒程度ずつ離されていく。すぐ後ろには1台ピッタリとついてきている。5ラップ目ぐらいからだろうか。 もう完全に前の2台のスリップ圏内から出てしまい、もはや挽回はかなり厳しい状況になってきたとき、うしろの1台がスリップストリームからストレートで1コーナー、インをついてきた。そのまま並んで1〜2コーナーを抜け、Aコーナーでまた並ぶ。一気にブレーキングで詰め、もう一度抜き返した。よし。Aコーナー出口から100Rで、完全に抜き返した。少し離れたが、Bコーナー出口でまたスリップにつかれた。今度はタイヤもタレてきているし、アウトから同じ手では抜かせてくれないだろう、と思い、ホームストレート上で少しずつラインをイン側に移していき、アウト側から仕掛けさせることにした。相手は案の定アウトに出て、サイドスリップを最大限に活用して、私の斜め前まで出た。しかし完全にインを押さえている私はそのままのラインで1コーナーに進入、アウトに出た車両はブレーキングオーバーでそのまままっすぐ、1コー ナーのグラベルに突入していった。こうして、前後近くに車両もいなくなり、一人旅になってしまった。 ピットサインを見ても、タイムは1秒程度落ちてしまっていた。こうして、そのまま10ラップの決勝のチェッカー。 全く結果を残せない状態だった。

決勝後・・・

ダメだった。これが車両を降り、チーム員に言った第一声であった。レースでは自分自身が結果の原因を知っている。また、知り得ていないようでは速くはなれない。そういう意味で私は悔しい思いを抱いて終えることになった。 俺の今年の戦いは、こうして幕を閉じた。 DEMIOは12月に最終戦が控えているが、その決勝日は一生でどうしても外せない用事があるからだ。

そうこうしているうちに、あるこのカテゴリーのベテランチームやベテランドライバーが、 まとめて自分のパドックを訪れた。 どうやら自分に言いたいことがあるらしい。「この話を上にあげようか、と思っている」ということをいいながら、自分の走りが危険である、ということを言いに来たようだ。
確かに予選では俺も行き過ぎがあったし、それを聞いて即座に予選では申し訳なかったと謝罪したが、 どうもベテランチームの方は決勝でも危険な走りをしていた、と言いたいようだ。
無論、私もワザとぶつけたりとか、ワザと押し出そうとか、そういうことは考えていない。 スポーツマンシップに反することだし、そんなレースは面白いはずがない。だから素直な気持ちで謝罪した。 また決勝のことは、どうやら1コーナーでコースアウトした車両のことを言っているのだなと悟り、 「若干ロック気味でラインを塞ぎ気味だったかもしれないから、そうだとしたら申し訳なかった」と言った。 その場はそれで、まあ穏便に済んだ。

しかし私の気持ちにはどうもわだかまりが残った。確かに予選ではやりすぎたことは認める。 だがそれについては予選終了後、ドライバーに謝罪したし、それについてオフィシャルや競技役員から 注意を受けたわけでもない。また話を上にあげるなら、暫定結果発表後30分以内で抗議(異議申し立て) をせねばならないはずだ。だが話に来たのはその後だったと記憶している。
もちろん、このことで事を荒立てようというつもりは毛頭ない。それはそれで、済んだことだからだ。 しかしこうしたことが、レースに参戦すると起こりえる、ということをみなさんに知ってもらいたいのだ。 こうしたことも、ある意味レースの一部と言える。
ベテランドライバーは「君の走りはジムカーナのような走りで、浅くクリップを取りすぎるから出口できつくなるんだ」 などと訳のわからない批判もされた。
みんな笑ってその場を去ったし、私もそれでいいと思う。まあしかしそれを言うなら、予選終了後にして欲しかったなあ、 というのは正直な気持ちだ。決勝では全く自分の走りについて身に覚えがなかったからだ。 きっと、そのベテランチームの方は、どうにかして私に自分の言い分を聞いてもらいたかったのだろう。 気持ちはわかる。私もそれなりにフォーミュラを含むレースを経験しているし、海外でのレース経験もある。 だがこういう形で自分の走り方について言われたのは初めてだ。私の観点からすると、このDEMIOというカテゴリーは、 客観的に見てちょっと閉鎖的な感覚を覚える。これがこのカテゴリーの雰囲気なのか、 富士チャンピオンレース自体の慣習なのかはわからない。だが、レースウィーク全体を通して、この一件だけでなく、 ものすごく頻繁に各チームのパドックを回って話し掛けてくる。情報収集を試みていることもあるだろうが、 これほどまでコミュニケーションをとろうとするカテゴリーのレースは見たことがない。 あまりに度が過ぎると、私の性格なのだろうか?興ざめしてしまう。仲がいいのはいい。 和んだ雰囲気でレースができるのはいいことだ。だが、それと他人の走りについてかなり 深いところまで入り込もうとするのは、コンペテティヴなレースをするのに反って妨げになると思うのだ。 初心を大切に、自分自身の走りに集中することこそレースの醍醐味だし、そこに他人の走りなどある意味どうでもいい。 そういう感覚で望んだ方が、進歩もすると思う。 自分のチーム員が、「スポットで参戦している者は、この1レースに賭けているから、 何が何でも前に出るという気持ちが強いのでは。そうした意味でレースに対する姿勢自体違うのではないのか」と言っていた。 それも確かにそうである。
しかしDEMIOのような底辺カテゴリーでは、常に新人がエントリーしてくるし、レース自体の雰囲気を掴んでいない ドライバーもいる。だからベテランチームにしては「雰囲気の違うドライバー」をも受け入れ、受けて立つ気概が必要だと思う。 こうした意味で、DEMIOはまだまだこれから新たなドライバーがどんどん参加して、台数も増え、よりコンペテティヴなレースができるようになることを願ってやまない。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。そして、応援していただいた皆さん、ありがとうございました。麻戟[スに参戦したドライバー及びチーム関係者の皆様、御疲れ様でした。また機会があったら参戦したいと思います。

そしてこれからレースに出ようと考えている方、参考になれば幸いです。健闘を祈ります。

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©KAZUMASA YAMAMOTO