◎第22話「NRCゴールデントロフィーレースヒストリックカー50分耐久レース」06/1/22
ここ数年、毎年この時期に開催されるこのゴールデントロフィーレースに参戦するのも恒例行事みたいになってきた。今回は再びTA22セリカでの参戦となり、筑波から続いて参加する形となった。しかし今回は参戦経験のある人達に声をかけてみるもののなかなか参加できるドライバーがおらず、どうしたものかと思っていたが、最終的に国内A級以上のライセンス保持者で、レース未経験者の二人が見つかった。斎@氏とY口氏だ。二人ともレースに対する意気込みは高かった。これはチャンスだと非常に前向きな捉え方をしていたからである。
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朝のマシンと鈴鹿の東の空。今年も日の出を拝むことができた。 |
レース未経験者の二人と共にレースということで、事前にテスト走行を何度かしたいところだったが、ドライバー3人の予定、チーム側の予定、そして鈴鹿のスポーツ走行の予定の3つが全くかみ合わず、結局前日のスポーツ走行でのテストのみでレースに臨むということになってしまった。
そこで私は次善の策をと思い、過去に優勝したレースの車載映像を二人に渡して毎日見てもらい、イメージトレーニングから入り、ドライビングのリズムなどをビジュアルで覚えてもらうことにした。実際にドライブするのがもちろん一番いいが、それができないなら少なくとも何もしないよりかはマシだろうと思ったのである。
レース前の1ヶ月ではほぼ毎週のように夜に集まり、ドライビングについてミーティングを重ねた。
当日の朝は今年も早かった。6:30にはサーキット入りして長いレース日の開始だった。パドックに入ってみると、前日のテスト走行を終えてピット内に佇んでいるはずのマシンが、何故か積車に載っているではないか。
「あれ?どうしてマシンがピットに入ってないの?」
ま、まさか…
そうである。ピットにマシンがないということは何らかの理由でサーキット外に持ち出したからだ。燃料を入れに外へ出たのか…?とも思ったが雰囲気もどうも違った。
そこで監督に話を聞いてみると…
昨日の夕方、走行終えてピットでメンテナンスを始めたんだが、デフオイルを交換しようとして開けたら、ゴロっと何か金属片が落ちてきたんだよ。これ…」と言ってそれを見せてくれた。
こっ…これは…。
要はデフが欠けてしまっていたのだ。一体いつのまに…。そこで監督は、いろいろ迷ったが急遽春日井市のトウカイ工場にマシンを持ち帰り、デフを交換することにしたのだった。監督らはほぼ徹夜で作業にあたってくれて、このレース当日の朝に間に合ったのである。この“非常事態”に速やかに対応してくれたトウカイにはとても感謝である。
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これがデフケースから出てきた謎のパーツ(笑)磨いて槍先にするか!(爆) |
今回の酔いどれポーズはこのお二人。やはり新人はこれをやってもらわねば(爆) |
(1)朝のスポーツ走行
かくして迎えた朝の走行。10分ほどフリー走行をし、そこからコントロールポストから“計測中”のボードが出されるとスプリントレースクラスの予選が開始され、耐久の我々はピットインする、という方式での走行だった。
ここでは、サーキット走行の累積走行時間がドライバー3人の中で一番少ないと思われる山@氏が走行することになった。まず慣熟走行から行い、ペースが徐々に上がっていく。しかしピット前に戻ってこない。どうしたんだ…?と心配していると、モニターに映るセリカの姿が。大丈夫だ、クラッシュはしていない。諸事情によりコースアウトしたようだ。とりあえずほっとし、マシンの回収を待つ。というところでこのスポーツ走行は終了となった。
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(2)決勝
後は決勝を走るだけである。13:35スタートということで進行を開始する。今回のレースは私が第1ドライバー、山@氏が第2ドライバー、そして斎@氏が第3ドライバーという順序で走行することになった。
スタート担当は第1ドライバーの私だった。まぁスタートは比較的得意なほうだし、燃料満タンの状態で走行するのには経験があるので担当することになった。まず最初に手ごたえをつかみ、ペースをつくってチームにおけるレース全体の流れをつくることが役割である。
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決勝出走前のマシン。特に問題なし。 |
今回のドライバー3名のヘルメットと共に。 |
2.決勝(13:45〜14:45)
11時ぐらいから雨も上がり始め、路面は次第に乾いてきた。頼む、このまま降らずにドライになってくれ!そう願っていた。
セリカは今回雨に弱い(笑)。ドライバーもチームもウェットの情報を持っていない。
予選ではウェットでの走行という貴重な体験とデータ取りができたが、今回のレースに勝つためには、ドライの方が可能性が高かったからである。
今回はクジ運もよく、3番グリッドからのスタートであったが、2番グリッドにつくはずだったマシンが決勝をリタイヤしたため、事実上の2番手スタートになっていた。まぁしかし前も後ろも速いマシンばかりだしフェアレディ432Zやポルシェもいるから、2コーナーまでにはあっという間に抜かれるだろうけれど(笑)。それでも前のグリッドからスタートできるのは気持ちいいもの。精一杯マシンをアピールした(笑)。
グリッドについた後、やはり3分前までの時間は非常に短かった。ホイールの増し締めを行い、数枚写真を撮影したらもうすぐに笛の音が。多分2分ぐらいしかなかったのではという感じだった。
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山@氏と乗り込む直前に確認の打ち合わせをする著者。 |
スタート前チェックの様子。暖気を終えプラグを交換。キャブ車ならでは
の光景だ。 |
すでに意識は集中して、目付きが悪くなっている(笑)。 |
キャラコートのバイザーの奥の表情は・・・ |
グリッドのつく直前のマシンと著者。 |
グリッドについた著者と山@氏。 |
いつも通りフォーメーションラップを終え、グリッドに。そしてシグナルでスタンディングスタートだった。クラッチミートはうまくいった。そして1コーナーへ殺到していく。ひとつ後ろのグリッドからスタートしたフェアレディ(SR)と並びながら1コーナーから2コーナーアプローチ。さすがに2000ccは伸びがいいようだ。そしてS字の一つ目で抜かれてしまった。今回はコーナーリングスピード、ストレートスピード共に少々向こうに分があるようだ。
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ピットモニター画面。スタート時のものである。3番手からスタートがわかる。 |
順位を表示する電光タワー。総合6位を走行中時のもの。 |
1分10秒程度からスタートし、すぐに9秒前半、そして8秒台へと入っていった。しかしまだ燃料がこなれていないせいか、S字などで踏み切れずタイムはそれ以上は伸びない状況だった。水温80度、油温110度。低め安定、問題なし。前後共に離れてしまい、一人旅状態になっていった。時折Sクラスのマシンがオーバーテイクしていく。うまくスリップを使わせてもらい、ストレートで引っ張ってもらう場面もあった。そうした状況だったので安定したタイムを出すことができた。
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ピット前通過1 |
ピット前通過2 |
ピット前通過3 |
3の拡大。丁度ピットサインに対して合図の挙手中でした |
今回のセリカは、各部の整備をしっかり行ったことでクラッチやブレーキのフィールが大幅に改善され、エンジンの吹け上がりもよくなった。結果ストレートエンド、1コーナー手前ではスタート直後から5速までシフトすることができるようになっていた。昨年までは燃料がこなれてきた後半にならないと5速は使えなかったから、ベストタイムが昨年よりも伸びたのは頷ける。
全体的なスピードも少し上がってきたためだろう、今までよりも限界域で少しオーバーステアが出やすい傾向になってきていた。しかしこれは歓迎できることで、元々アンダーステア傾向の強いTA22セリカでは、コーナー進入のターンイン時に向きを変えやすくすることがタイムアップを図る重要な要素になるからである。
いずれにしても8秒台前半をコンスタントに出せたのはよかった。しかし、同クラスの他チームのペースは6〜7秒台だったり、何と3〜4秒台だったり(走行終了後確認)。
は、速すぎる…。
さあ、そして第2ドライバー、山@氏に交代。さあ、ドライバーチェンジの練習通り、素早くいくぞ!
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著者から山@氏への交代。 |
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山@氏に交代後、汗を拭き、アイソトニックウォーターを飲みつつデッキチェアーで例によってピットモニターをデッキチェアーで見ながら休憩。さあ、後は頼んだぞ!
今回レース初挑戦となる山@氏は、今回超短期間での座学を中心としたトレーニングでレースに臨んだ。レース前の1ヶ月間、毎週のようにミーティングを繰り返しドライビングの基礎や鈴鹿東コースの攻略など、私と一緒に順番にカリキュラムを組みながらこなし
てきた。過去のレースの車載カメラ映像も渡して毎日見てもらい、まずイメージを高い位置に持っていき、右脳に刻み込んだ後、実際に走行して身体にリズムを叩き込んでいくというドライバー育成の体現をしてもらうようなプログラムを消化してきている。
しかし走行時間がスケジュールの関係でなかなか取れず、実技部分がどうしても不足していたのが響いてしまい、本人自身、思ったようにタイムを上げられなかったようだ。しかし比較的安定したタイムを出すことができていた。まだまだ煮詰めるところはある。今後につながる素晴らしい経験ができたのではないだろうか。レースはこれだけではない、これからも続くのだから…(…って勝手にこれからもレース出ると言い切ってますが(笑))
何せ決勝を走ることは、普通のスポーツ走行での練習の少なくとも3回分に相当する経験が蓄積できるからだ。これを読んでいるレーシングドライバー予備軍の諸君!ぜひコストの少なくてすむレースを見つけ、結果は考えずに決勝でチェッカーを受けてみよう!(笑)
もし鉄道の運転士の「乗車時間」や、飛行機のパイロットの「飛行時間」のように累積の乗車時間を記録する習慣がレースの世界にあったら、決勝レースでの「走行時間」は3倍増しでログブックに記録する、という形になるかもしれませんよ!?(おぃおぃ)
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山@氏から、フィニッシュドライバーの斎@氏に交代。 |
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かくして山@氏は走行を終え、斎@氏にバトンタッチ。さあ、フィニッシュドライバーに後は託した!ガソリンがこなれてきたのかタイムは上がり調子。タイヤもブレーキも少しずつつらくなってくる後半だが、ここで水温が低いせいか、ストレートを中心にエンジンの吹け上がりがやや鈍くなってしまう場面もあった。しかし順調にラップを重ねていき、大きなタイムの落ち込みはないようだった。フィニッシュドライバーに交代してからは、順位的には総合で9番手からのスタートになった。そしてここから追い上げていくことになる。ピット内では走行を終えた山@氏と共にレースを振り返りつつ、斎@氏のドライビングをピットモニターで見つめていた。
順位は9位から8位へ、そして7位へと上昇していった。よし、何とか後一つ順位を上げていってくれ!と願いながらコントロールポストの残り時間を示す電光掲示板を見ると、もう10分を切っていた。自然、プラットホームでサインを出す監督や、ホームストレートを駆け抜けるたびにマシンに視線も移っていく。最後にはペースアップを手で示しながら自らプラットホームへと出ていった。
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ピット前を駆け抜ける斎@氏。 |
…そして、チェッカーが振られた。チーム員全員が、プラットホームからチェッカーを受けたマシンとドライバーに手を挙げたり振ったりして完走を喜び合った。
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コントロールポストのチェッカーフラッグを受ける斎@氏。この瞬間のために
レースをしているんだという画だ。(勝てなかったけれど(笑)) |
いずれにしてもチーム全員の力で無事完走を果たした。どんなレースでもそうだが、やはり完走しなければ順位はつかないのだから、まず走り切ることが大切だ。自分自身に対して限界に挑戦し、マシンの限界に挑戦する。攻めて攻めて…そしてチェッカーを受ける。その集大成、結果としての順位であるのだから、プロセスも重要だ。今回はレースウィークだけでなく、新しい仲間を迎えてレース前から様々なプロセスを踏んだレースだったから、私自身そのプロセスを楽しみながら臨むことができたし、チームプレイの楽しさ、喜びを改めて感じたレースだった。いずれにしても楽しいレースだったと思う。
急なトラブルにも完璧に対応してくれたプロジェクト・トウカイと、レースを支えてくれたチーム関係者の皆さん、そして新たに一緒に走ったドライバーの両氏…このメンバーで今回レースできたことに感謝し、次につなげていきたいと感じてやまないレースであった。
まぁ、レース後、メンテナンスのため休業していたため、サーキットのお風呂に入れなかったのが残念といえば残念だったが(笑)
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ドライバー3名でマシンと共に。 |
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