◎第7話 筑波マイスターカップ 第5戦
1.はじめに At the beginning...
シーズン途中から参加となった今シーズンのマイスターカップのレースシーンも、残すところ1戦のみ。チームである鈴商さんからは「表彰台に上れ!」という至上命令が・・・。そのために私自身も発奮し、
「そういうことなら、前日から筑波入りしてテスト走行をするぞ!」
と、自己負担を増やしてでも結果を残すべく、今回の最終戦に臨んだのであった・・・。
※今回は前日入りしたこともあり、パドック入り口トンネル横のガレージを借りた。1泊3000円と、
まあまあの料金で借りることができる。今回は前日の夕方から翌日の朝まで雨がかなり降ったこともあり、
これを借りて大正解。作業効率がまるで違った。
2.11/3のスポーツ走行(Free session on Nov.3, the day before of race day)
意気揚揚と昼1時からの走行に乗り込んだ。しかし、予定外、ということはよく起こるものだ・・・。
マシンにある致命的とも言えるトラブルが発生。ここでは詳細なことは明らかにできないが、
このままスポーツ走行をするのは非常に危険と判断。そのトラブルの解消のために時間を費やすことになった。
その後何とかトラブルは解消するのだが、1枠目は数ラップで終了、2枠目はその対策のためにキャンセル、走行できなかった。
そして3枠目。さあ、走ろう、と思ったら雨が降り出し、一面完全なウェットコンディションに。レインタイヤなど持っておらず、038を履いたままコースイン、とりあえず先ほどのトラブルが解消されたかどうかの確認だけ、という形になってしまった。
ここで、天気予報も確認してみたところ、どうやら明け方には雨も上がり、レース日は晴れるということだった。だからここで無理して走行しても仕方がない。コース上もいたるところでスピン、コースアウト車両が多発し、赤旗が何度も出るハメに。私自身も2回のスピンを経て(笑)、無事戻ってきました。目の前に黒いFDが物凄い挙動をしてスピンしながら壁に激突!クラッシュパッドを派手に飛ばしながら止まっていた。(※ビデオ映像を見る方は、よく注意していればその決定的瞬間を楽しむ(?)ことができます)
3.予選(Qualify)
結局ドライでまともなセッティングもできないまま、予選に突入。今回の予選は9:00ごろからで、まあまあの時間と言えた。朝から気持ちよく晴れ、眩しい日差しの中予選はスタートした。コースインするとまたところどころが濡れていて、最終コーナーの進入付近、ちょうどブレーキングポイント付近が日陰でまだ乾いていなかった。
タイヤもレース用に温存しておいたタイヤに履き替えた。セッティングも一応前日の感触から、ダンパーをやや柔らかい方向性に持っていった。アタックを開始するが、アクセルに移るタイミングは同じでも、リアが今イチ粘らず、踏み込んでいけない。トラクションのかかりが少々弱いようだ。各コーナーで全体的にアンダー気味で、その後リバース的にパワーオーバーになる。
そんなこんなで、予選は1分5秒台と奮わず、クラス7番手からの決勝スタートとなった。
※今回のマイスターカップパドックの全景。最終コーナーの内側と、一番奥の方だった・・・。
まあ順番に回ってくるから、今回の位置も予測はできたが。とりあえず第1ヘアピンの観戦
スタンドの正面ということもあり、観戦にはいい位置だった、とりあえず。
4.決勝(15周)(Final, 15Laps)
「決勝はキメてやる」。毎回のセリフだし、中盤以降の位置からスタートするドライバーが必ず言うセリフなのだが、
やはり自分もそういう気持ちでいた。スタートが比較的得意なので、ここで前の集団に喰いこみ、争いに加わろうということだ。
予選のフィーリングから、トラクション不足を解消すべく車高を変更した。
タイヤ内圧も、早い段階から温まるように調整しておいた。
さて、気持ちは作ることができた。フォーメーションラップでは、ウェービングしながらも冷静にステアリングを切ってから
ロールして、タイヤに伝わるまでのタイミングや動きを確認した。
このとき、何故か「行けそうかな」と感じた。何故だかわからない。カラ元気、とも言える自信だったのかもしれない。
※グリッドについた様子その1。集中している。
※ッドその2.もう目つきが悪くなっている(笑)。
グリッドにつき、シグナルが点灯する。今回のレッドシグナルは短かった。2秒前後ではなかっただろうか。クラッチミートもうまくいった。ややホイルスピン気味にスタートした。2速に入れて加速したところで、真中が開いた。そこへ飛び込んでいった。すると、イン側に1台、そしてアウト側に1台と、私を真中に3台が並んで1コーナーへ進入する形となった。
ここで、さらにアウト側から1台が1コーナーに進入、おそらく自分のラインを走っていたのだろうが、結果的に前をふさがれる形になってしまい、行き場を失ってしまう。ブレーキング。完全にロックしてしまった。白煙も上がっていたと言う。しかし間に合わなかった。そのアウト側から進入してきたマシンの右リアフェンダー付近と、私の左側面が衝突、2台はお互いに弾かれた。どうやら、このときその他にも接触したマシンはいたようで、私の後方を含め合計6台がからむ接触事故が起こっていたようだ。しかしこのときは全車がコースに留まったようであった。
私は宙に浮いたらしい!ピットでそれを見ていたメカニックの話によれば、「空中を飛んでたよ!誰のかわからないが部品も飛んでたし、その瞬間、「さ、帰ろ。」と思ったさ。思わず工具箱を手にとったね。」などということだった。しかしその後走りつづけ、またホームストレートを走り抜けるのを見て我に返ったそうだ。(笑)
私は着地した直後、「うわ、当たってしまった!」→「大丈夫かな?」→「おお、ハンドルはちゃんと切れる!」→「おお、アクセル踏むとちゃんと加速する!」→「おお、ハンドル戻すとちゃんと戻る!」→「おお、前後左右ともバランスは崩れていない!」
・・・というように、全くマシンのダメージのことなど眼中になく、とにかく走り続けることができるかどうか、しか考えていなかった。
この時点で、私はキレていたと思う。一度ぶつかったことで「どうにでもなれ」状態。次に第1ヘアピンで、目前のマシンのインを激しくチャージ。接触寸前だった。ダンロップ下を通過した後の緩やかなコーナーでも揺さぶりをかけるが、さすがに前のマシンも牽制の動きをとっていた。
続く第2ヘアピンで、少々ブレーキを詰めてアプローチ。前を行くマシンは、まだタイヤが温まらないためにアンダー気味になっているような挙動になっていることに気づく。「行ける。」第2ヘアピンの立ち上がりでアウト・イン・インで、加速で抜くラインをとって一気に抜いた。
さあ、次だ。少し間をあけて、前にロータスがいる。各コーナーで少しずつ差を詰めていく。タイヤが温まりきらない前半が勝負と踏んでいたので、一気に勝負をしかけようと思っていた。またしても第2ヘアピンの立ち上がり、今度はスリップストリームについて、一気に抜きにかかった。しかし!最終コーナー進入、前方でマシン同士の接触事故が!白煙が上がり、フェンダーが目の前で吹き飛んでくる。それをよけつつアクセルを弱めたところを、ロータスに抜き返されてしまった。
そしてその後、、1コーナーで自分のインをついてくるマシンが!これはスタート時に接触したケイターハムではないか!右リアのフェンダーが取れてタイヤが剥き出しになっている。しかし走行に支障はないようで、軽快に抜いていった。そして前を行くロータスをも、いとも簡単に抜いていった。これはスピード差がありすぎる・・・。最終的にこのマシンは3位に入賞してしまうのだが、やはり速い。圧倒的に速かった。
その次のラップの1コーナーだった。セオリー通りのラインで進入するロータスに対し、ブレーキを詰めてインをつき、一気に抜いた。よし。これで2台。1台抜かれたのでプラスマイナスで1つ順位を上げたことになるが・・・。後で分かったことだが、1台がスタートでフライングし、ピットインしていたり、ダンロップ出口で1台ストップするなどしていたようだ。ここで前は離れてしまっており、一向に姿は見えなかった。
しかし中盤に入っており、各車恐らくタイヤも温まってきたのだろう、先ほど抜いたロータスが、逆に後ろから迫りつつあった。ミラーに映る距離にいる。各コーナーでつついてくる。第1コーナーの進入では、やられたらやり返す、というところだろう、インをチャージしてくる。ここはブロックラインをとりつつも、完全にインのラインをとったり、真中あたりから進入したりと、動きを読まれないように毎周ラインを状況に応じて変えながら走行した。一度1コーナー立ち上がりで並ばれるが、何とか第1ヘアピンで踏みとどまる。そのまま我慢比べになってきた。そしてチェッカー。そのときは順位も全くわからないまま、フィニッシュした。
後で聞いた話では、今回上のクラスにラップされることなく、15ラップを走りきったということだった。しかも、下のクラスのマシンをもう少しで周回遅れにできるぐらい差し迫っていたと言う。
自分としても精一杯運転できたと思っている。決勝ではセッティングが決まったせいもあるのだろう、予選のトラクション不足は解消され、タイムも予選よりもアップした。ただ、第1ヘアピンでのアンダーは消えず、終始ここで苦労した。
※ちょっと暗くて見づらいが、スタート直後の1コーナーの接触で大きく凹んでしまったマフラー。
フェンダーも損傷している。ついでに自分も凹んだ。
マイスターテントでの正式表彰式の図。とりあえずモノはもらった(笑)。
5.今年を振り返って
シーズン途中である第2戦から参戦、しかも満足なテストも行うことができない状態でスタートした今季であったが、一言で言えば最高位は4位と、決して満足できるとは言えなかった。しかしマシン全体の仕上がりを考えると、まあこんなものだろうか、という思いもある。
テスト走行を十分に行い、関東勢の動きをもっと知った上で参戦すれば勝機も増えたことだろう。何より、自分自身がバーキンに慣れるのに時間がかかってしまった。フォーミュラとハコの中間の動き、尚且つリアはリジットサス、というところで、今まで経験したリア駆動のどのマシンともセッティング方法が異なる。全くゼロから経験することになってしまったことが、満足な結果を得られなかった要因のように思える。
今年1年間、曲りなりにも4レースを消化してマシンの構造とセッティングの方向性に理解が深まったし、やはり何だかんだ言っても、「レースのセッティング」とはシビアなものだし、条件によって克明にセッティングも変化する。どこがどの程度変化するのか、という傾向を掴むのが最も重要で、それさえ掴んでいれば、天候、路面状況、気温などによってどうすればいいか予測しておくことができるからだ。
これは実際に走行を重ねてひとつひとつ理解していくほかない。だからこの1年で理解が深まったのである。
底辺層のレースカテゴリーにおいては、特に「2ヵ年計画が良い」と言われるのは、それが理由なのだ。1年目から結果を出すことは難しい場合がある。十分にデータを得て、2年目で勝利することを目標とするのが、無理のないスパンで実績をあげることができよう。
来年もこのカテゴリーに参戦することが許されるのならば、是非やりたいと思っている。
最後に、今年マイスターカップ参戦について応援していただいた皆さんにこの場を借りて感謝申し上げると共に、来年に向けての活動に力を入れようと思っている。また、来年どんなカテゴリーに参戦するのかはまだ未定だが、変わらぬ応援・ご声援のほど、宜しくお願いして、2001年シーズンの終わりとしたいと思う。
ありがとうございました。来年も宜しくお願い致します。
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