◎第10話 鈴鹿新春ゴールデントロフィーレース ヒストリックカー50分耐久 2003/1/19
1.参加決定〜テスト走行
昨年の夏の筑波サマーフェスティバルでヒストリック60分耐久レースに通称ダルマセリカ、セリカ1600GTVを初めて参戦させた経験から、マシンのポテンシャルアップを狙ってきた。そして、2003年の冬があけきらない1月中旬に、鈴鹿東コースで同様の50分耐久レースがあるという。そこでそのレースに照準を合わせ調整していくが、今回も参戦するか?というプロジェクトトウカイからのオファーに対し、二つ返事で快諾し参戦を決めた。何と言っても鈴鹿は走っていて気持ちのいい、素晴らしいコースだし、何より近い。2時間ぐらいで行ける。頭の中はその話を聞いたときから鈴鹿が走れると既に思い込んでいた。
うんちく♪
さて、このページを初めて見る人のために解説しよう。このヒストリックカー耐久レースは、1975年以前に作られた車両によるレースで、耐久は当時のN1にあたるPクラスと、それ以上の改造をしたSクラスとなっている。さらに排気量によって各々1、2と分かれているのだ。今回も我らがセリカ1600GTVは、P2クラスでのエントリとなる。ノーマルエンジン、ノーマルミッションで、タイヤは市販ラジアルタイヤのみとなっている。今回もヨコハマネオバを装着した。
そして年が明け、いよいよテスト走行となった。レギュレーションの範囲内でマシンの各部を見直し、真冬の鈴鹿サーキットに足を踏み入れた。プロジェクトトウカイの社長さんによると、今回の鈴鹿東コースは高速レイアウトになるため、筑波よりシャシー性能による差がより大きく出てくるとのこと。そのための対策をしてきた、ということだった。それに、「今回のターゲットタイムは1分8秒台!」と指令が出ていた。
この日の鈴鹿は、気温は非常に低いながらもドライ。風が強く寒い日だった。まずマシンフィーリングを確認するためにコースインするが、前回の筑波の時より、格段に足が踏ん張ってくれる。筑波の時は、特にタイトコーナーでプッシュアンダーが非常に強く出て、アクセルオンを早めたくてもできない感じだったが、今回は鈴鹿東コースで高速レイアウトということもあり、各コーナーでフロントタイヤが逃げてしまう傾向はかなり小さくする方向でマシンを調整。アンダー傾向は2コーナー進入時や逆バンク出口の左への切り返し、この当たりで強く出るが、S字ではスムーズに曲がってくれるようになった。
まずゆっくり走って1分13秒台、少しずつ踏んでいき、10秒台がコンスタントに出てきた。しかし9秒台、8秒台と入っていかなくなった。一旦ピットインし状況を確認。どうやら油温が低すぎてパワーが出ていないようだ。サーモを変更し、再コースイン。すぐに油温は適正になり、9秒9と、10秒を切って9秒後半が出始めた。1コーナー進入は当初3速で行っていたが、4速で行けることがわかり、4速で進入した。するとどうだろう、やはり鈴鹿の1〜2コーナーは高速コーナーでタイムに物凄く影響するため、9秒5、9秒4とタイムがコンマ5程度一気に縮まった。最終的に9秒3まで到達。パートナーのおなかん氏も交代後序々にペースを上げ、最終的に9秒3までタイムを上げた。ちなみにギアは1ラップで2回しかチェンジしない。ストレートはギリギリ5速に入らず、4速。1コーナーは4速のまま進入、2コーナー進入で3速。ずっと3速のまま最終コーナーまで走行してストレートで4速、という具合だ。
この日のテーマは、鈴鹿東コースでのマシンフィーリングに慣れることと各部のチェック、ターゲットタイムへのチャレンジといったところだったが、概ね順調であった。8秒台には入ることはできなかったが、マシン的にどこを見直すべきか、ドライバーとしてどのコーナーをどう走るか、という課題が見えてきた。次はもうレース当日の走行となるが、当日はドライなら恐らく8秒台は確実に入るだろう、という予想の下にテストは終了した。
1.レース当日 受付〜フリー走行
当日の朝は早い。午前6時から受付開始だ。まだ暗い内から鈴鹿入りし、受付を行う。ここで、このレースの最初の勝敗を左右する要因となる出来事があるのだ…。そう、このレースには予選がない!!じゃあ、スターティンググリッドはどうやって決めるんだ!?…受付時に、くじ引きで決めるのだ…!抽選箱の中に入っているスクラッチカードを引き、表面を削ってその数字で確認するのだが…さて、どうも俺はクジ運が悪い。おなかん氏に引いてもらおう、と思って引いてもらった。ちなみに、参加するヒストリック耐久は、前部で11台が参戦している。さあ頼むぞ、「1」を引いてくれ!
スクラッチカードが引かれる…。
@ 受付嬢が表面を10円玉で削り始めた…
A 「1」という数字が現れる。「うぉぉっ、やった!ポールだ!」(0.5秒)
B 「でも何か数字が横によってないか?」)(0.5秒)
C そして、隣にもう一つの「1」が現れた…(0.5秒)
D 「……。どんケツ……。」
!どうやら、おなかん氏のクジ運は俺以下らしい (-_-メ)
気を取り直して朝8:00からのフリー走行に臨んだ。今にも雨が降り出しそうな空だが、何とかドライを保っている。気温、路面温度ともに非常に低い。温まるまで、ちょっと時間がかかるかもしれない。ピット前移動の時間になると、すぐに並んでコースイン。今回はブレーキパッドも新品に換えてきている。まず1周はパッドに焼きを入れてやらなければならない。フィーリングを確認しながらまず走り始めた。
走り始めてすぐ、マシンの動きが変わっていることに気付く。「うぉぉ?なんじゃこりゃ?」思わず走行しながら声を出してしまった。ターンインでは、テスト走行の時よりもむしろクイックにフロントが入っていく。しかしリアがワンテンポ遅れて動き出すのだ。動きとしては、荷重が掛かると突然リアがグイッと曲がり始め、ステアリングが持っていかれるような感触になる。おいおい、これは結構ピーキーなマシンになってしまったのか?以前とは別物の車と言っていいぐらいだ。
リアに荷重が乗った瞬間、唐突にリアが曲がり始めるので、初期の舵をこぶし一つ入れた後、そのリアの動きを待ち、リアが動き始めた瞬間に舵角を戻す、というような当て舵走法、ソーイング走法みたいな感じで走らせることになった。タイム的には、前後が非常に詰まってクリアラップが取れなかったこともあり9秒9程度に留まった。しかし、コーナーでは確実に前回のフリーよりも速くなったという感触を得た。特に前回気になった2コーナー進入時のやや強いアンダーステアが解消されてグイグイ曲がっていく。これはアクセル全開時間が長くできそうだ。
気になったのは、1コーナー進入時荷重が前に掛かった時、リアがフロントに対して柔らかすぎるのだろう、マシンが不安定になりアプローチ姿勢を作るまでに少し時間がかかる雰囲気があった。「ラインを塞がれたりしたら少し怖いかもな…」とも思ったが、もうこれ以上マシンをいじることはできない。ドライバーが何とかするしかなかった。できるかぎりリアに荷重を乗せた状態で走ること、つまりアクセルを踏んでいること、これによってマシンを安定させるより他にない。
しかしエンジンは快調、7000までよく回る。そしてミッションも確実な感触をもって、しっかりと入る。
※朝からものすごくテンションの高いトウカイ社長さん。凄過ぎる。
掲載せずにはいられなかった1枚だ。手に持っているのはもちろん酒ではない。
酔ってもいなければ、夢遊病に侵されている訳でもない。
2.決勝 50分耐久
決勝を前に、前回の筑波の時と同様、ドライバーチェンジの練習を行った。昨年の状況を思い出し、「ドアを開けて、ドライバーチェンジが完了してドアを閉めるまで15秒以内」を目指すことにした。2回に分けて練習し、最終的に15秒以内に完了できるまでに至った。そう、コースタイムを縮めるのは難しいが、ピット作業で時間を縮める方が比較的簡単だからだ。
※スタート前、早めにマシンに乗り込んでいるところ。もう間もなくコースイン時間だ
今回はレギュレーションにより、2回以上のドライバー交代が義務付けられ、且つ各ドライバーは最低10分以上走行しなければならない。且つ、スタート後40分経過以降はドライバー交代は認められない、という形になっていた。我がチームのドライバーはおなかん氏と私の2名。まずスタートドライバーは私が務め、10分経過後交代。おなかん氏が25分走行し、最後の15分は私が走行、という段取りでいくことになった。
いつものように早めにマシンの中に入り、気持ちを落ち着かせていく。(いつも大体コースイン時刻の15分前ぐらいには既にマシンに乗り込み、ヘルメットも被るのがクセになっている)
スタートは1周してグリッドにつき、フォーメーションラップを1周した後スタンディングスタート、というスプリント形式のものだった。コースインなどのスタート前進行時間までには、既に雨が降り始めていて、路面は少しずつ濡れてきている。雪になりそうな寒さだ。コースインの際、完全停止の状態からドライ路面でのスタートの回転でクラッチミートしてみる。やはり相当ホイルスピンする。どうやら3000回転ぐらいでミートするのが良さそうだ。いつもコースインの時、クラッチミートの回転数をその日の路面で確認するのがクセになっていた。
※グリッドについたところ。既に雨が少しずつ降り始めていた。
※後方より。ご覧のように前に何台も並んでいるぞ。
タイムスケジュールが押しているのか、ピットへの退去までの時間がかなり短かった(1〜2分しかなかったのでは?)。グリーンフラッグが振られ、フォーメーションラップスタート。おなかん氏のクジ運が悪かったので最後尾スタートだが、1台リタイアが出ていたため繰り上がって10番グリッドだった。1分前でエンジンスタート、すぐにどこかで1台がストールしたらしく、ピットウォールで黄旗が振られている。その数が増えていき、2本、3本と黄旗が振られた。おいおい、こんなにエンジン掛からないのかよ、と思いながらも密かにほくそ笑む。そしてそれは1本になった。どうやら2台のエンジンは掛かったらしい。3番グリッドのファミリアロータリークーペのエンジンが掛からないらしい。それを抜いてフォーメーションラップがスタートした。
フォーメーションラップで特にすることは今回ない。マシンフィーリングは分かっている。極力コーナー時にアクセルを踏むなどして、リアタイヤを温めることのみに専念したが、短い東コースではあまり意味もないだろう、などと思っていた。途中、エンジンが掛かったのだろう、S字付近でロータリークーペが後ろから追いついてきた。
そして再びグリッドに着き、スタンディングスタートだ。例によってスタートの得意な自分は、スタートでどのコースで前車を出し抜いてやろうか考えていた。10番グリッドはイン側の位置になる。イン側の車は、何もなければ真直ぐ行こうとするし、アウト側の車はイン側に進路を変更することが多い。(プロは別だが)すぐ前の8番グリッドはホンダS800、車幅は狭いので、さらにそのイン側に行けると思っていた。イン側のグリッドから1車身分あけてさらにその内側、ピットウォールから2メートルぐらいは安全地帯のペイントがしてあり、ここは進入禁止だがら、本当に1台分しか隙間がない。これはタイミングが合わないとぶつけられることになる。そして今、実質9台が自分の前にいることになる。
※この写真でよく分かる。中央のS800と、左の白線・オレンジ線の安全地帯の間の1車身分のスペースを通るイメージをし、実行した。狙い通りだった。
5秒前が出る。すぐに3000回転をキープ。鈴鹿のホームストレートは下り坂なため、スリックタイヤ等以外ではブレーキを踏んでいないと動き出してしまう。サイドブレーキを使い、足はアクセルに集中することにした。
シグナルレッドが消え、スタート。瞬間クラッチミートし、わずかにホイルスピンしつつ車は前に鋭く加速する。すぐにS800との間隔が縮まり、右にステアし思った通りのラインでまず1台をオーバーテイク。インいっぱいのラインをとっていたために自分の視界には入っていなかったが、この時アウト側にいたフェアレディ2000も抜いていたらしい。そして1コーナーから2コーナーをクリア、この時点でもっと混乱するかとも思っていたが、皆冷静で、クラッシュや接触はないようだった(未確認)。この時最後尾スタートとなったロータリークーペを含めると4つポジションアップ、総合7位ということになる。2コーナー出口すぐに、もう1台のS800がいたが、立ち上がり速度は明らかにこちらが優速らしく追突寸前でアウトからオーバーテイクした。ここで総合6位。
そしてその後はすぐ前にはフォードコルチナとミニが2台並ぶような感じで走行していた。ウェット路面のため、すぐには勝負せず若干様子を見て、S字から逆バンクを抜けるまで後ろにつき、最終コーナーとなる東コースショートカット進入では、出口で抜くことを想定してブレーキのタイミングを合わせ、早めのアクセルオンで一気にイン側から抜いていった。ホームストレートから1コーナーでのことである。クラス違いとは言え、2台を続けてオーバーテイクできた。この時点で総合4位にアップした。約半周頭を押さえられていたため、トップ2台の432フェアレディZとデイトナは逃げてしまい、遥か遠くに見える。そしてその手前には今回同クラスのライバル、サニーがいる。そこでオープニングラップを終えコントロールラインを通過、2周目に入った。ピット前を通過する際、どうも少し心配そうな表情をしているように見えた。
サニーにはジリジリと追いついていく。3周目か4周目ぐらいだっただろうか(よく覚えていない)。S字付近でテール・トゥ・ノーズ状態になると、サニーの動きが少し不安定になった。プレッシャーを与えているのだろうか、或いは…そう思いながらもしっかりと存在をアピールするかのようにくっついていった。
とりあえず雨のレースでは、相手に自分の存在を知らせておかないと、接触しやすくなり、もらい事故をする可能性も高くなるからだ。すると逆バンク付近の進入に失敗したのだろうか、クリップにつけずアンダーステアを出し、車速が落ちた。チャンスだ。そこで先ほどと同じように、逆バンク出口で右から左へ切り返すと、最終コーナーのブレーキングのタイミングを合わせ、出口の加速から、スリップを使って抜こうと考えた。最終コーナーでは並びかけず、早めのアクセルオンに集中し、全開にするとすぐにサニーの真後ろへつき、スリップ圏内の位置をキープ。そのままコントロールラインを通過、通過後イン側へ入ってオーバーテイクに成功。よし。サニーを抜いたぞ!ここで総合3位、クラストップに踊り出た訳だ。しかしさすがにトップ2台は速い。完全に見えなくなっている。
しばらく一人旅が続く。バックミラーを見るが、サニーが近づいてくる様子はとりあえずなかった。少しずつ離れていくようだ。
ピットサインを見ると、1分10秒ぐらい出ているラップもあった。おお、ウェットの割にはそこそこタイムも出ているな、と思っていた。平均すると11秒台が多かったように記憶しているが、雨の降り方でタイムもマシンの挙動も如実に変化した。やはり雨量が多くなり「おおっ滑るな〜」と思うと、大体遅い時で14秒台ぐらいまで落ち込んでしまう。
1コーナーでも少しオーバースピード気味に入ると、慣性と路面のうねりによって4輪ドリフト状態となり、接地感が無く浮くような感じでマシンはイン側に軽く巻き込む。アクセルと弱カウンターで修正しながら2コーナーのアプローチ姿勢の準備をするが、あまり1コーナー通過速度を上げすぎると2コーナーでアンダーステアを誘発する雰囲気が漂っていたので、1コーナーの進入速度とアクセルの量は、2コーナーできちんと曲がれる速度でやや控えめな感じで入った。その他のコーナーはアクセルに足が移るポイントは同じだが、全開にできるポイントは雨量が増えるにつれて奥になっていく。そして雨量が減れば、全く逆になっていく。実にその変化がよく分かった。ネオバは実にコントロール性のいいタイヤだ。水温は85℃、油温は95℃。少し低めだがまだ前半だ。油圧はぴったり3キロ。
それにしてもピットは妙に盛り上がっている。スポンサー様やチーム員たちは、腕をあげて応援してくれている。まあそうだろう、総合3位だしな(ピットサインでポジションはドライバーに知らされている)、などと、ドライバーは運転に集中しているのでいたって冷静なものだが…。(笑)
そしてしばらくするとピットインのサインが出た。さあ、ドライバー交代だ。頭の中で交代の手順をおさらいしながらピットロードへ進入。ピットレーンの制限速度は60km/hとなっている。ピットロードはとりあえず踏んでいき、速度制限区間に入る頃に所定のギアと回転数(事前に打ち合わせ済)で入っていく。ピットが見え、練習通りにエンジンをオフ、すぐにドアを開け素早く降り、おなかん氏が乗り込む。左側のドアはチームの人間が、そして右側のドアは降りたドライバーがサポートしてシートベルトをはめる。終了したらドアを閉め、エンジンスタート、再コースインだ。よし、練習通り上手くいった。さあ、おなかん氏、任せた。
※1回目のドライバーチェンジ。スタート後10分を経過、おなかん氏に交代だ。交代作業時間、推定で13秒ぐらい。
ウェット路面のため、滑りやすいしコンディションは常に変化している。少々不安だが(乗ってる人以外は皆心配なものだが)、まあおなかん氏なら大丈夫だろう。とりあえず汗を拭いて水を飲む。一旦プラットホームまで出て、おなかん氏のドライブを見るとピットに戻り、モニターを見ながら小休止。どうやらペースが上げられないようだ。ラップタイムは1分17秒台。まあ壊すよりマシだ。その後、1分16秒、15秒と少しずつタイムが上がり始める。そして大体、13秒後半から14秒前半付近で安定し始めた。爆発的なタイムではないが、他のライバルチームもあまりタイムは伸びておらず14秒〜15秒ぐらいで走っているようだし、このままのタイムでも充分行けそうだ。この時点では、案外雨脚が強くなって、ペースの上げられないのかもな、と思っていた。
それにしてもトップ2台は速い。1分8秒台、1分7秒台で走行している。これはとても追いつけない(クラス違いだし、当たり前だ)。一旦ドライバー交代のピットインにより総合7位となるが、その後他チームも続々とピットインし、総合6位、5位と回復していき、やがて総合3位にまで戻った。よし!これなら今日は行ける!
約20周ほどでピットインのサインが出て、2回目の交代。さあ、フィニッシュに向けて出番だ。ラスト約15分、力を出し切ろう。おなかん氏がピットへ入ってくる。そして練習通りまたドライバーチェンジだ。ほんの少し手間取ったが許容範囲内。コースインすると1コーナーから2コーナーでブレーキの感触とタイヤの接地感を確認。よし、大きな変化はない。行けそうだ。ならばタイヤのグリップの許す限りペースを維持してやろうと思った。
※2回目の交代。おなかん氏が約25分走行し、スタート後35分過ぎのことだ。一瞬終了間際に手間取ったが、作業時間は推定16〜7秒だろう。
途中、何台か周回遅れのマシンをオーバーテイクした。相変わらずピットは盛り上がっている。ペースはまずまずだ、1分10秒から12秒ぐらいでラップできている。タイムのせいなのだろうか、盛り上がっているように見えた。途中、勝手に自分の中でライバル視(もちろんいい意味で)していたサニーに遭遇。多分周回遅れだろうと思いながらホームストレートでスリップストリームから抜くと、ダブルスリップの形で自分のさらにイン側をトップの432Zが抜いていく。「悪いな!」という感じで手を挙げてくれたので、こちらも手を挙げて合図した。というのはほとんど同時に自分と後ろから来た432Zがスリップから抜けたからである。外から見ると、ホームストレートを3台並んで走るような形だっただろう。
サニーを抜いた頃から、又しても雨が少し強くなってきた。加えてタイヤは少しタレ始めており、グリップ感は最初よりだいぶ落ちていた。そのためか、各コーナーの全開にできる時間が短くなり、ペースが13秒〜14秒ぐらいのアベレージに落ちてきた。すると、サニーが再び息を吹き返したかのように、今度はジリジリと追いついてくるではないか!1周抜かれたとしてもまだ1周差があるわけだから、それでもいいのだが、どうも抜かれるのはイヤだ(笑)。水温、油温も各部にも異常はない。「ちょっと張ろうかな〜」などと思い、頑張ってペースを維持することにした。ストレートはこちらが速く、1〜2コーナーの高速区間もこちらが速い。しかしS字区間から逆バンクで詰められる。どうやらサニーはタイヤはまだ余裕のようだ。トウカイの社長さんによると、サニーはコーナーリングマシンで、当時からコーナーは速かったという。そんな言葉が脳裏を過ぎった。しかし最終コーナーはどういうわけか、こちらの方が速い。そんなことを繰り返しながらも、わずかずつ追いついてくるが、スリップ圏内にはまだ入らない。コントロールラインを通過する度、電光掲示板の残り時間を確認する。あと数分だ。このあたりで、水温95℃、油温105℃。
残り時間がわずかになってきたころ、2コーナー出口でロータリークーペが巻き込んでスピンオフしたのだろう、イン側のグリーンの上で止まっている。その頃には雨とタイヤのタレのせいで、どんどん滑ってきた。1コーナー進入時、いつもほぼ慣性による4輪ドリフトで弱カウンター。2コーナー出口でカウンターが大きく当たり、ドキッとする場面もあった。そのまま修正できなければ、止まっているロータリークーペに突っ込んでいたかもしれない。
S字付近でもアクセルを丁寧に操作しないとパワーオーバーを誘発しロスしてしまいそうだった。後で聞いた話では、ピットでは結構心配していたという(笑)。そんなことは露知らず、サニーに抜かれまいとペース維持に集中していた。残り時間1分、そして電光掲示板の表示は消え…よし、ラストだ。
ファイナルラップまでペースは極力変えず、そしてチェッカー。嬉しさのあまりライトを点灯して、大きく腕を振りながらコントロールラインを通過した。よし!お立ち台だ!
※総合3位でフィニッシュできたことはコース上でも分かっていたので、お立ち台だぁ!と思いライトをつけて腕を振り上げながらチェッカーを受けた瞬間。ピットもかなり盛り上がっていた。写真上部に写っているのは、鈴鹿の浮かばれない霊の手だ(ウソ)。
※レースを終えマシンを降りた瞬間。チームの皆が駆け寄ってきて、互いに握手やハグを交わした。何とも幸せな瞬間。
ピットレーンに戻ると、入賞車両が車両保管のために停めるパルクフェルメに誘導される。おお〜気持ちいい。チーム全員がそこで待っていた。すぐに暫定表彰となった。実は鈴鹿のポディアムに上るのは初めてだ。しかもクラブマンレースと違い、観客席側の表彰台ではなく、F1と同じコントロールタワーの上の方なのだ!これはなかなか立てる場所ではない。放送でチーム名と名前がトップから順に呼ばれ、総合3位の台に立つ。そしてシャンパン(フルボトル)がひとり一人に手渡され、シャンパンファイトが始まった。上位3位、各2名ずつ合計6名のシャンパンファイトは、外から見ればさぞ凄かっただろう!いつもの倍のシャンパンが飛び交っている訳だから。
※F1などのビッグレースでしか使わないコントロールタワーのポディウムで暫定表彰!赤いスーツが著者。著者の右がおなかん氏だ
※派手なシャンパンファイト。かなり盛り上がってしまった。この後おなかん氏は著者の顔にシャンパンシャワー。私はゴクリと大口で飲んだ(笑)
おなかん氏はモロに顔に向けて発射してきたので、目にシャンパンが入って痛い痛い!
しかし最高の気分だった。そのシャンパンを一口飲んだが、その甘かったこと、美味かったこと…。まさに勝利の美酒だった(大袈裟な(笑)。)その後チームの皆で回し飲みし、喜びを分かち合った。その時、「勝利の美酒がどうのこうの・・・などと訳の分からんことをぶつぶつ言っていたのは言うまでもない(笑)。
※マシンの前でドライバー二人がポーズ。優勝のときは、何をやっても許されてしまうものだ(笑)
それにしても総合3位、クラス優勝を、セリカは参戦2回目にして獲得できたのだ、これは非常に早い。トウカイの社長さん曰く、今までTE27でデータの蓄積があったからこそ、今回の優勝ができたということだ。確かにそうである。今回もちろんドライバーがペースを維持しなければ勝てないが、それ以上に道具であるマシンを如何に仕上げていくかが重要である。今回の勝利はそうした基礎の上に成り立っているのである。そしてスポンサー様を始め、チーム員や応援してくれた全員の力で勝利を得ることができた。いつも言っている台詞だが、「レースは一人ではできない」のだから。関係者の皆様に、厚く御礼申し上げる次第である。
※正式表彰式での1コマ。JAFメダル、しかも金をもらえて上機嫌の著者とおなかん氏。
|