山本和正パーソナルサイト

◎第20話 岡山国際サーキット 岡山チャレンジカップ AE86ワンメイクレース

今回のレースは、自分が根本的に近年参戦したレースとは異なっていた。そもそもAE86という、非常に人気のある車種のレーシングカーに対して真面目に向き合った経験がなく、全く初めて触れると言っていいマシンである。それに加え、岡山国際サーキット(旧TIサーキット英田)の走行経験もなく、初めてのコースで初めてのカテゴリー及びマシンという組合せであったため、テスト走行を含めて走り込みの必要性を強く感じていた。

ハチロク、という言葉の響きには、モータースポーツやクルマ好きならば、人それぞれの想いがあるだろう。YZサーキットでお客さんのマシンに乗ったり、インストラクターとしてレッスンで乗ることはあっても、レーシングカーとして向き合ったことはなかったため、私にとってその響きは“未知のマシン”。どうやら今年は近年にないチャレンジの年になったようだ。

以前に岡山でスポーツ走行を行った(コースライセンスも新たに取得しました!)が、出たタイムはとてもレースで通用するようなタイムではなかった。この事がむしろ自分の悔しさとあいまって発奮材料となり、どうしても挑戦したくなったという側面もあった。 プロダクションカーAE86 ※マシン外観。NO.1という、とてもわかりやすいカーナンバーをいただいた(笑)

レースウィークは金曜日からサーキット入りし、入念にセットアップを進める計画だった。しかし金・土・日と3日間もあれば、梅雨時期ということもあり天候は変化するもの。金曜はドライであったが土曜にはウェットとなり、貴重なウェットでの走行も経験できた。当初、決勝日の天気予報は雨マークとなっていて、土曜・日曜とウェットだろうという予想だったのだが、日曜は一転してドライコンディション。土曜以降ウェットだろうと中途半端に終わった金曜のドライでのテストのみでレースに臨むことになってしまった。

1日だけのテストということでもっと走行したがったが、金曜日にサーキット入りをしていたからこそ1日でもテストができ、セッティングを多少なりとも進められたと前向きに考え、その状況でいくしかなかった。

まずこのTIチャレンジカップ、AE86ワンメイクレースについて簡単に触れておこう。マシンはAE85又はAE86形式のフレームを使用し、エンジンは4AG。車輌規定としてはN1規定のカテゴリーだ。大雑把に言えばエンジン・ミッションがノーマルでなければならずエアロパーツなどの空力部品は禁止されているクラスである。タイヤはスリックタイヤを着装。スリックタイヤというところが、このカテゴリーを非常に面白くしている。

AE86というカテゴリーはやはり“86使い”を自認するドライバーが多く参加してくる“こだわり派”集団のレースになっている。ハチロクでなら誰にも負けない、というドライバーや、ハチロクにずっと拘り続けた連中が参加してきており、非常に層が厚いのだ。しかもここは岡山、関西勢も多い。関西勢は勝負にかける意気込みも高いのである。

こうした連中はやはりグリップレベルの低いタイヤでレースするより、とにかく全開で踏んでいけるスリックタイヤでレースしたほうが燃えるだろうし、事実スリックタイヤ着装であるが故にドライバー全体のレベルも高い。エントリーリストを見ても、20代は少なく10代は皆無、多くが30代以上で、レース経験の多い者が参加してきているのがわかる。
プロダクションカーAE86 ※チームメイトのエンジンをセットアップする風景。

プロダクションカーAE86 ※各マシンの勢ぞろいしたピット前からの風景。

今回は刈谷のアクロスレーシングチームからお誘いを受け、この一癖も二癖もあるカテゴリーに、やや無謀ながらも参加することになったのである。今回このカテゴリーには私と代表の近藤氏を含め4台エントリー。いずれのドライバーもAE86の手ダレであり、もちろん私よりもハチロクの走らせ方をよく知っている(笑)。今回は初レースということもあり、できる限り皆から巧い走りを盗んで自分自身のテクニックに活かそうと考えていた。
インパネ周り。結構ノーマルを残していると言える。 ※インパネ周り。結構ノーマルを残している。

C72 SUPER COOLING LIQUID ※フェンダーとヘルメットに貼り付けたC72のステッカー。このクーラントは良く冷えますよ!

予選はニュータイヤを着装し、タイムアタックを行った。さて、どういう風にアタックしようかと出走するタイミングを含めて当初考えていたが、予選時間は15分だし今回は初レースということもあって様子見も含め、早めのタイミングでコースイン、目いっぱい走ることにした。ドライコンディションとなった予選だが、タイヤのグリップの本当に美味しい最初の数ラップでタイムを出していかねばならない。気合を入れすぎたのか、後で振り返ってみるとかなり突っ込みすぎの操作になってしまったようだ。

予選中は他車とあまり絡むこともなく、チームメイトの2人が自分の前を走行し引っ張ってもらう形になったので比較的走り易かった。
学生のときの友達と ※応援に来てくれた学生時代の後輩と共に。かなり久々に会いました

車載カメラサービス ※車載カメラを取りつけている様子。岡山国際でうけられるこのサービスはとても良い。綺麗なパッケージングまでしたDVDで受け取ることができる

そうして迎えた決勝。グリッドは21番。アウト側でかなり後ろの方である。いずれにせよ後ろは気にせず、前についていくことが肝心だった。この日のスタートのタイミングは、その日に行われたレースで確認していたが、シグナルの赤点灯時間が非常に短く、点灯したらすぐ消えるぐらいのタイミングだった。そのため、フォーメーションラップを終えて再度グリッドについた後は、10秒前の表示が出る前から回転を合わせ、クラッチを踏む左足を若干浮かせて備えていた。スタートは得意な方だから、1コーナーまででどの進路でマシンノーズを食い込ませていこうかを考えていた。
決勝スタート前のピットの風景。 ※決勝スタート前のピットの風景。

コースイン直前、マシンに乗り込む。 ※コースイン直前、マシンに乗り込む。
スターティンググリッドの風景。 ※スターティンググリッドの風景。
後輩と共にグリッドに。 ※後輩と共にグリッドに。

そしてシグナル赤点灯、消灯でスタート。クラッチミートはうまくいった。スピードにのせていく。直前のグリッドからスタートの2台の間に入りたいところだったが、2台はくっつくように接近しており、1コーナーアプローチの前にアウトに進路を取った。1コーナーは右ターンだが、2コーナーは左ターンのため、続く2コーナーでイン側をとることもできるだろうという計算からだ。そして1コーナーへとアプローチ、ブレーキングしてターンインする。すると目の前で1台がスピン、それをよけようとした1台がさらにスピンし、そのスピンしたマシンに後続車が衝突するという激しいスタートになってしまった。幸いそれを避けるだけの余裕があったので、アウト側にとまったスピン車両を避けて右に避けた。しかしここでスタートからコース左側を走行していた筆者はそれを避けるために減速せざるを得ず、少し前の集団と離れてしまった。続く2コーナーでインを前車のインを差そうとしたが及ばずそのまま抜けていった。モスSをクリアし、奥のスプーンのブレーキングでインを突き、1台をオーバーテイクした。
5分前ボード表示は岡山サーキットクイーンが担当。 ※5分前ボード表示は岡山サーキットクイーンが担当。

後輩と共にグリッドに。 ※決勝中、ホームストレートを駆け抜ける筆者。

前には少し離れて数台のグループが形成されていて、それに続くバックストレートではその集団の激しく動き回る駆け引きを後ろから見ながらの走行になった。あれに追いついて絡みたいなぁ、と思いながら走行していくが、ジリジリとラップを重ねる毎に引き離されていった。その後、何周目だったかわからないが、スタート直後の1コーナーでのトラブルでスピンし後方に下がっていた一台が少しずつ追いついてきて、結局抜かれてしまった。そしてその位置のまま10周のチェッカーを受けた。
ポルシェチームのキャンギャル ※関係ないがポルシェチームのキャンギャルの撮影に成功(笑)
このホームページのためにわざわざ撮りました(爆)

・・・え?もうこのレポート終わりなの?と感じている方も多いと思うが・・・このレースはそれほどレポートする事もできない内容だったからだ。つまり“長い一人旅”。ハチロクというマシンの難しさを痛感したレースであり、いかにセッティングが重要かということも再認識させられたレースでもあった。ハチロクはセッティングが命という話はよく聞くが、パーツ選びも含めて非常にハチロク独自のノウハウがあるようだ。

もちろん、操るドライバーの鍛錬も必要だ。どうもフロント部のピッチングが大きい気がしたため、特にタイトコーナーの進入などでステアリングを強いリズムで一気に切るマニューバーを繰り返していた。振り返ってみると、それによって立ち上がりラインは楽にはなるかもしれないが、アクセルオンが遅れ、さらにマシンの旋回が遅めに開始されるというパターンにハマッていたように感じられる。要は突っ込みすぎハマりである(笑)。

リア側の伸び側の調整と共に各足周りの全体の見直しを進める必要があるだろう。これはドライバーが走りこんで調整していくしかない。ドライバー次第でセッティングが進む、進まないが決まるのだ。そういう意味からしても走りこまねばならないのだ・・・。

ブレーキリリースの仕方、そしてステアリングを切り込むタイミング・・・これをまず操作方法とセッティングの両面からまた見ていく必要があると感じている。

さて、私が次に参戦できるのは12月の最終戦。それまでにこれらをクリアして、より上位を目指していかねばならない。

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©KAZUMASA YAMAMOTO