キミは、GTドライバーを知っているか??
そう、YZでは既に語り草として、後世に(?)語り継がれる伝説の人物、それが、
「GTドライバー」なのである。
もちろん、この人物はGTドライバー全般を指すものではない。
ノンフィクションのストーリーが、今始まる・・・
「その人物」は、突然YZへやってきた。
見知らぬごくごく一般的な白い国産のセダンに乗って、某走行会が開催されているパドックまで入ってきた。
私はそのとき、コースやコントロールタワーの準備のために入場してきたそのときは直接見ていない。
その後、その走行会主催者が私のところへやってきた。主催者は「その人物」を指差しながら、
「山本さん、あの人知ってる?」
と聞いたのだった。
私はその人物のことは全く知らない。
『あの人、自分は国際ドライバーで、プロだから、ドライビングを参加者に教えるからタダで参加させろ、って言うんだよ。』
「はあ?」
私は言葉を疑った。しかもその人物は、とても「参加させてくださいね♪」という態度とはほど遠く、
非常に粗野で乱暴な口調と態度であった。
しかも、「その人物」
は、自分はポルシェでGT選手権に参戦する某チームのドライバーである、と言っている。
それならば、私はすぐわかるのだが、
見たことも、聞いたこともない名前だった。
走行会が始まると、コントロールタワーの上にズケズケと上がってきたその人物は、
「ここはタワーの上で、オフィシャル専用となっておりますが、失礼ですがどちら様ですか?」
と私がちょっと白々しいかな、と思いながらも聞くと、
『俺は○○○チームのドライバーの○○だ!ったくこの走行会の連中はなってないな。』
というような内容のことを話し出し、止まらなくなっていた。どうやら、走行会主催者の自分に対する態度が気に入らないらしい。
最初は、1戦ぐらい乗ったドライバーか、又はテストドライバーか何かで、自分を誇示するためにそんなことを言っているのだろうか、とも思ったが、
その○○○チームは確かテストドライバーなどいない。
しかも、どう考えても,
GTのドライバーになれるような社会的分別をわきまえた人間とも思えない。
私はだんだんと腹が立ってきた。
その自称GTドライバーは、同じことを何度も何度も繰り返し言っているし、話は堂々めぐりでいっこうに建設的でない。
それどころか、
精神を病んでいる、
分裂症気味の症状で、
話が一向にかみ合わないし、
第一まともな会話になっていない。
尚且つ、冷静に聞いていると、
単に走行会主催者の自分に対する態度が気に入らなくて、それに詫びをいれてもらいたい、ということだけなのだ。
確かにそのGTドライバーのことを知っている走行会参加者もいるみたいで、まんざらウソでもないらしいが・・・
ということは問題行動を起こして干された元ドライバーというところか?
それにしてもうさん臭い人物だ・・・
私はどうしてもそのGTドライバーの言うことが信用できない。
当然、走行会主催者も信用していない。
そのうち、サーキット事務局にその怒りの矛先が向けられることになった。
走行会主催者は問題者だから、サーキット側で何とかしてもらいたい、というのである。
このあまりにも筋違いの話に呆然としながらも、物凄く基本的なサーキットの走行の手続きの仕方などを説明した。
だんだん話しがややこしくなってきた。
どうやら、
自分は組の構成員ではないが、その筋の者で、
喧嘩を売るのでれば、『抗争』ということで本部に連絡し、しかるべき行動をする、
ということまで言ってきた。確かに、体には彫り物もあった。
私の予想では、過去に一回程度レースに参加した(金が集まったので)その筋の方か、(意外にレース界にはそうした方が多いのは事実である)または過去に本当にGTドライバーとして契約をしたのだが、事故か病気で体と心を悪くし、以来どうしようもなくなってしまった、というところだと思う。
走行会主催者もそうしたことが話をしているうちにわかってきたようで、
だんだんとそのGTドライバーのことを「かわいそうな人」として扱うようになった。
確かに、精神を病んでいるようで、異常なほどの寂しがり屋のようであった。自分が認めてもらえたとわかると、非常に簡単に自分のことを話し始める。
しかも朝来て、結局夕方頃まで居座っていた!
非常に疲れる1日であったことは覚えている。あまりシャレにならない、伝説の人物の一人である。
最後に走行のスケジュール表やサーキットのパンフレットを持っていき、また来ると言っていたが、
2度と来ることもない。
またしても、2度と来ることのない、そして1度も走らずに終わった人物の話であった・・・・・・
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