山本和正パーソナルサイト

ノーブレーキヘアピン エピソードU

…君は、ノーブレーキヘアピンを知っているか?

YZサーキットの鬼門と呼ばれるコーナーは数が多い。しかし意外に隠れ鬼門コーナーとして、このノーブレーキヘアピンとも呼ばれる第2ヘアピンにまつわるもう一つの話がここに…

そう、このヘアピンは意外にも散ったものの数が多いのである・・・。YZで最もタイトなコーナーであるにも関わらず、ガードレールが近いこともあり、2002年になった21世紀になってさえ、クラッシュは続いている・・・。そんなクラッシュのひとつに過ぎないことを、ここに明記しておこう・・・。

詳しいことはわからない。私はその日、ショップ廻りのためにサーキットを離れていたからだ。しかし、職員の話から、その模様は鮮明に記すことができるのだ…。

ある昼下がり、その日は非常に混んでいたと言う。最近のグリップ走行限定時間は、とみにその人気も高まり、走行が集中して混みあうことが多いのだ。そんな中、その日もスポーツ走行が始まった。

始まってすぐだったと言う。そのフェアレディZ(先代型)が、非常にアヤシイ動きをしていたのに気づいたのは…。

「あれ…かなりキケンだよな…」

コントロールタワーのコース員はヤバめの動きに、思わず漏らしていたと言う。

それもそのはず、1コーナーを抜けた直後も、一瞬スライドして車はアウト側を向くし、第1ヘアピンの進入もエライ勢いで突っ込んでいき・・・

フルブレーキングの後、相当アンダーステアを出してターンイン、そしてアクセル全開でパワーオーバーでリアをスライドさせながら立ち上がるという、極めてマシン挙動を不安定にさせていたのだ。

見ればわかるのである。同じスライドでも、きちんとコントロールしている動きとそうじゃない動き。あるいはトリッキーにリアが出る場合でも、ドライバーがそれを判っていて対処しているかいないか、などは…。

だがそのZは、

全く危険だったようだ
(↑日本語は間違っていますが気にしないように(笑))

そのZが、それだけで終わればよかったのだが…

そう、ここにネタとして挙がっている異常、いや以上、それで終わる筈がない。

何周目だったか判らない。混みあったコース内、第2ヘアピン進入は、

ブレーキをロックさせながら激しく白煙を上げてブレーキング。

そしてターンイン、全開で(多分フラットにスイッチのようにガバっと踏んでいた)アクセルオン、物凄い勢いでリアが出て、フロントがインに巻き込む。

そして…

フルカウンター!!!!!????

いっぱいまでカウンターステアのつもりで右に切ったのだろう、タイヤは完全に右を向いている。アクセルは全開のまま、エンジンはうなりを上げ、タイヤは白煙を上げ…

そしてその次の瞬間!

「ゴゴーン!!!ガガガガガガ・・・バラバラバラ・・・」
(砂利がガードレールに当たる音も同時に…)

アウト側のガードレールに突撃、激しく激突し、且つその上に乗り上げてしまい、斜めに止まったではないか!!

フルカウンターでいっぱいまで右に切って立ち上がり、アクセル全開のままタイヤのグリップが回復し、ハンドルを切った方向に車が急加速していったのだ!

アクセルもハンドルも戻す間もなく、瞬間的にガードレールに衝突したのだろう。

当然、すぐに赤旗で中断だった。

…現場へ到着すると、フロントタイヤは完全にガードレールを乗り越えてしまっていた。ドライバーに怪我はないようだった。若い男性だったとのことだが、ガードレールを乗り越えたお陰で、マシンの損傷は最小限で済んだようだ。それにしても前部は大破、とても自走して帰れる状況ではなかった。

しかもホームストレート側まで、ダートの砂利が激しく出てしまっていた。

ジープで後方から牽引してみたが、ガードレールに食い込んでいて引き出すこともできない。

仕方なく、場内にいた人達に協力を要請し、人力でフロント部をガードレールから持ち上げて浮かせ、何とかジープで牽引しながら引き出した。そして舗装部まで引き出すと、リフトでパドックまで運搬していった。

それにしても見事な当たり方であった。これだけ見事に当たったのは、そう滅多にないことだ。しかもガードレールに乗り上げるという、前代未聞な事故である。

いずれにせよ、この裏YZに取り上げられる資格は充分にある。

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©KAZUMASA YAMAMOTO